2014年 米国臨床腫瘍学会年次集会 現地座談会 CRC編

FOLFOXとFOLFIRIの比較

#3534:WJOG4407G試験
切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとしてのmFOLFOX6 + BevとFOLFIRI + Bevをhead to headで比較

室:続いては、mFOLFOX6 + BevとFOLFIRI + Bevを比較したWJOG4407G試験です。

砂川:FOLFOXとFOLFIRIを比較したV308試験の結果、どちらを先に使ってもOSに差がないことが証明されていますが、本試験はBev併用時の効果を直接比較した初めての試験です。患者背景は両群間に差はなく、結腸癌が55%程度、転移巣2個以上が55%程度、KRAS exon 2野生型が50%程度でした。

 主要評価項目であるPFSの中央値は、mFOLFOX6 + Bev群10.7ヵ月、FOLFIRI + Bev群12.0ヵ月であり、非劣性が示されました (HR=0.905, 95% CI: 0.723-1.133, 非劣性p=0.003) (図7)。また、OS中央値はそれぞれ28.9ヵ月、31.8ヵ月で差はみられませんでした (HR=0.901, p=0.376) (図8)。奏効率はそれぞれ62.2%、63.8% (p=0.757)、R0切除率はそれぞれ9.1%、10.2% (p=0.736) で、いずれも有意差はみられませんでした。

 後治療は、BBPを使用していたのが50%程度、KRAS 野生型は50%程度ですが、抗EGFR抗体薬も30%程度使用されています。PFSのサブグループ解析を見ると、術後補助化学療法を行ったサブグループ、転移巣が1個のサブグループでFOLFIRI + Bev群が有意に良好でしたが、サブ解析の域を出ないと思います。有害事象に関しては既報のとおりですが、QOL評価では、FACT-C、FACT/GOC-NtxのいずれもFOLFIRI + Bev群が良好で、FACT/GOC-Ntxでは有意差を認めました (p<0.001) (図9)

室:小松先生、お願いします。

小松:V308試験におけるFOLFOX、FOLFIRIのOSは約20ヵ月でしたが、そこにBevを併用したことで30ヵ月に延長しました。本試験ではmFOLFOX6 + Bev群に対するFOLFIRI + Bev群の非劣性が証明されたわけですが、すべての項目でFOLFIRI + Bev群が少し上回っています。現在の日本における1st-lineはFOLFOXが主ですが、FOLFIRIを再評価してもいいのではないかと思います。

佐藤 (温):本試験ではQOLも測定しているところがいいですね。

室:そうですね。しかも、18ヵ月後まで評価しています。PFS中央値が10~12ヵ月なので2nd-lineも含めた評価であり、非常に価値があると思います。

寺島:ただ、FACT-Cは全身的な評価、FACT/GOC-Ntxは神経障害についての評価だと思いますが、FACT-Cでは有意差が出ていませんね。

佐藤 (温):これまで、神経障害と下痢のどちらがQOLを低下させるのかわかりませんでしたが、本試験により神経障害のほうがQOLを低下させることが示唆されました。もちろんQOLは副作用だけでなく、病勢制御などさまざまな要素が絡みますが、1つの示唆にはなるかと思います。

室:FOLFIRI + Bev群では2nd-lineに主にFOLFOXを使用し、mFOLFOX6 + Bev群ではFOLFIRIを使用していると考えられますが、1st-lineにおける神経障害のQOLの差が2nd-lineの期間においても残っているというのは興味深いと思います。また、今後発表されるKRAS 別の解析結果の報告なども待ちたいと思います。

Lessons from #3534
  • 切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineとしてPFSにおけるmFOLFOX6 + Bevに対するFOLFIRI + Bevの非劣性が示された。
  • PFS、OS、QOLのいずれにおいてもFOLFIRI + Bev群が少し上回ったことから、1st-line におけるFOLFIRIを再認識すべきかもしれない。

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