この学会レポートも今年で15回目となります。新型インフルエンザで現地へ向かうことができなかった2009年を除いて毎回、米国臨床腫瘍学会年次集会の会場の熱気とともに最新の研究結果をどこよりも早くお届けしてきました。その間、大腸癌の化学療法は5-FU/LVからFOLFOXとFOLFIRI、さらには抗VEGF抗体薬または抗EGFR抗体薬の上乗せへと進歩を遂げました。バイオマーカーによる症例選択の道も開け、切除不能進行・再発大腸癌のMSTは12ヵ月から30ヵ月にまで延長しました。
一方、胃癌の治療成績の向上は、大腸癌と比較してやや後塵を拝している感がありますが、Ramucirumabの登場で2nd-lineの確立に光明が差し、さらにPembrolizumabにも期待がかかります。胃癌の化学療法の治療成績に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が寄与する時代が到来したと言ってよいでしょう。切除不能進行・再発膵癌の治療においても、FOLFIRINOXとGemcitabine + nab-Paclitaxel、S-1の有効性が確認され、臨床ではそれらが使い分けられていると考えます。
このような治療成績の向上と治療の標準化は、手順を踏んだエビデンスの積み重ねによってもたらされたものです。また一歩前へ進む消化器癌の化学療法を目の当たりにできる喜びを皆様と分かち合いたいと思います。