消化器癌治療の広場

2011年 米国臨床腫瘍学会年次集会 特別企画座談会 Uniformed or Personalized? 
大腸癌の病態に応じたアプローチを考える

Discussion

吉野: 2nd-line治療については、どのようにお考えでしょうか。

Köhne: BRiTE試験のデータでは、BBPによりOSの10ヵ月以上の延長が示されていますが16)BRiTE試験はあくまでも観察研究です。TML試験の結果ではOSの差は1.4ヵ月であり、抗EGFR抗体薬との差は認めらません。

設楽: 無作為化試験による直接比較が待たれますね。

Köhne: 私も同意見です。直接比較試験の結果を待ちましょう。

吉野: 日本の実地臨床において、ESMOガイドラインはどのように解釈されますか。まず注目したいのは、グループ3では必ずしも1st-lineでL-OHP、CPT-11を併用する必要はなく、5-FU + Bevacizumabあるいは5-FU単独でもよいと示していることです (図7)。グループ3はindolentですから、この考え方は間違ってはいないと考えますが、逐次治療が担保されていることが条件になるでしょう。

結城先生

室: この治療戦略に一理あるとは思いますが、CAIRO2試験ではXELOXに Bevacizumabを併用することでPFSが延長しています36)。このエビデンスを考慮すると、L-OHPについては、日本のガイドラインに当てはめるのは難しいでしょう。

設楽: 実際、グループ3に対しても5-FU + Bevacizumabはほとんど使用しません。病勢進行が速いか否かについて、1回目の画像診断では判断がつかない場合もあるため、最初はL-OHPなどとの併用化学療法 + Bevacizumabで開始するほうがよいと思います。効果がみられた場合、そのタイミングでL-OHPを中止するという選択肢もあります。

結城: 私も併用化学療法で開始したうえで、早めに休薬する方がよいと考えます。

設楽: ただ、治療レジメンには疑問もありますが、ESMOガイドラインのグループ分類は日本でも受け入れやすいのではないでしょうか (表1)。

山ア: 臨床でここまで分類するのは難しいかもしれませんが、このような治療戦略を持って臨むことは大切です。

吉野: そうですね。グループ分けをして治療方針を考えることは実臨床に沿っていて、参考になると思います。
 本日はESMOのガイドラインを中心に、大腸癌治療における分子標的薬の位置づけについて多くのことを議論することができました。KRAS 野生型の1st-lineおよび2nd-line治療については、Bevacizumabと抗EGFR抗体薬の直接比較試験の結果、そして新たなバイオマーカーの発見が待たれます。そして、より多くのベネフィットを享受できる症例を見つけ出し、それを実践していくことが重要と思います。本日はありがとうございました。

集合写真

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