消化器癌治療の広場

2011年 米国臨床腫瘍学会年次集会 特別企画座談会 Uniformed or Personalized? 
大腸癌の病態に応じたアプローチを考える

Short Lecture-3
大腸癌治療の2nd-lineにおける分子標的薬
設楽 紘平 先生
2nd-lineにおけるエビデンス: BBPを中心に

 山ア先生の発表にあったように、日本の1st-line治療において多く使用されている分子標的薬はBevacizumabです。したがって、2nd-line治療ではBevacizumab投与後の症例が中心になるかもしれません。
 2nd-lineにおける各薬剤の有効性の概要を示します (表10)。VELOUR試験TML試験では、VEGF阻害薬の併用によりOSの有意な延長が認められました。その一方で、20050181試験において、KRAS 野生型症例のPanitumumab併用の奏効率が35%と良好なことが示されたのは、VEGF阻害薬との大きな違いと考えます。また、KRAS 野生型のサブグループ解析では、Bevacizumabを含む1st-line治療後PDとなった症例におけるPanitumumab (20050181試験)とBevacizumab (TML試験)の生存ベネフィットはほぼ同等でした (HR=0.68, 0.69)。
 TML試験では、VELOUR試験のAfliberceptと比べて、Bevacizumabのfeasibilityが示されました。したがって、BBPは特定の症例に対する2nd-lineの選択肢の1つになると考えられます。また、奏効率は5.4%と低値でしたが、KRAS 野生型症例におけるOSが15.4ヵ月と良好な理由として、抗EGFR抗体薬による後治療が考えられ、実際に約70%の症例が抗EGFR抗体薬の後治療を受けていました。また、BBPと2nd-lineでの抗EGFR抗体薬のOSは臨床試験の間接的比較によると同程度であるため(20050181試験15.7ヵ月)、KRAS 野生型症例ではいつ抗EGFR抗体薬を用いるべきかを検討する必要があります。

日本における2nd-lineの治療戦略

 日本の1st-lineにおいて抗EGFR抗体薬は、グループ1またはグループ2の症例に対するconversionまたは症状緩和目的で用いられることが多いと考えられます。しかし現在、1st-line治療において最も使用されているのはBevacizumabです。Bevacizumabを1st-lineで投与した場合、2nd-lineにおいて2つの選択肢があります。1つはBBPを行い、3rd-lineで抗EGFR抗体薬を使用する方法、もう1つは2nd-lineで抗EGFR抗体薬を用いる方法です。
 私は抗EGFR抗体薬による疼痛緩和に注目しています。EPIC試験のQOL解析では、Cetuximabの併用と疼痛の改善の間に明らかな相関を認めています39)。このエビデンスに基づき、症状を改善するために抗EGFR抗体薬を使用することが多いです。
 また、すべての症例に対して、BBP後に3rd-lineを施行できるとは限りません。われわれは、2nd-line後の予後因子を解析し、5つの予後因子 (PS 2、低分化腺癌、腹腔内転移、LDH 400 IU/L以上、初回 PFS 6ヵ月未満) を特定しました。この予後因子数によって、症例を3つのグループに分類すると、各リスクグループ間で生存率に有意差が認められました (図6)。ここで重要なのは、高リスク群では3rd-line施行率が低かったという点です。したがって、腫瘍縮小効果を必要とする症例や、予後不良症例に対して、私は2nd-lineで抗EGFR抗体薬を用います。
 以上より、2nd-lineにおける抗EGFR抗体薬は、有症状症例や進行が速い症例に適していると考えます。それ以外の症例では、BBPが標準治療になるかもしれません。
 現在、Bevacizumabの1st-line治療後PDとなった症例に対する2nd-lineのBBPとPanitumumabを比較する2つの無作為化試験 (SPIRITT試験40)、WJOG6210G試験) が進行しています。なお、WJOG6210G試験では、Kohne indexによって症例を層別化し、各予後因子をレトロスペクティブに解析し、translational researchとしてHER2やheregulin発現などを検討する予定です。

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