監修:名古屋大学大学院 医学研究科 坂本純一(社会生命科学・教授)
L-OHP既治療転移性結腸・直腸癌に対するFOLFIRI-3(CPT-11 day 1、3投与+LV+5-FU)またはその他のCPT-11ベースのレジメンの有効性:GERCOR OPTIMOX1試験
Bidard F-C, et al., Ann Oncol. 2009; 20(6): 1042-1047
進行結腸・直腸癌に対する現行の標準的なfirst-line治療はFOLFOX4である。CPT-11は化学療法未施行または5-FU無効の転移性結腸・直腸癌のいずれに対しても有効であるが、first-line FOLFOX療法歴のある患者に対するCPT-11ベースのsecond-line化学療法のデータは極めて少なく、この患者群に対するCPT-11ベースの標準化学療法レジメンは確立していない。FOLFIRI-3はCPT-11を5-FU持続静注の前と終わりに半量ずつ投与するレジメンであり、FOLFOXまたはCPT-11ベースやL-OHPベースの治療歴を有する患者において良好な成績が報告されている。
本研究では、未治療転移性結腸・直腸癌に対してFOLFOX4またはFOLFOX7を実施した第III相無作為化試験であるGERCOR OPTIMOX1試験の登録患者のデータを用いて、FOLFOX後のFOLFIRI-3の効果をその他のCPT-11ベースのレジメンと比較した。
解析対象はCPT-11ベースのsecond-line治療を受け、bevacizumabまたはcetuximab投与患者を除外した342例である。Second-line化学療法レジメンをFOLFIRI-1(112例;CPT-11 180mg/m2 day 1+LV 400mg/m2 day 1+5-FU 400mg/m2 bolus+5-FU 2,000mg/m2 46時間持続静注)、FOLFIRI-3(109例;CPT-11 100mg/m2 day 1、3+LV 400mg/m2 day 1+5-FU 2,000mg/m2 46時間持続静注)、およびその他のCPT-11ベース(121例;CPT-11単独、raltitrexedとの併用、5-FU/LVやcapecitabineとの併用など)に分類し、データをプロスペクティブに記録した。PFS、OS、および奏効率の評価を実施した。
奏効率(CR+PR)は全群10.3%、FOLFIRI-3群17%、FOLFIRI-1群8%、その他の群6%であった。Second-line化学療法開始後のPFS中央値は全群3.0ヵ月、FOLFIRI-3群3.7ヵ月、FOLFIRI-1群3.0ヵ月、その他の群2.3ヵ月で、FOLFIRI-3群が有意に優れていた(FOLFIRI-1群との比較でp=0.001)。多変量解析から、PFS延長にかかわる因子はFOLFIRI-3レジメン(RR 0.43、95%CI 0.28〜0.68、p=0.0003)とfirst-line治療時のLDH値(p=0.0006)であった。Second-line化学療法開始後のOS中央値は9.3ヵ月で、多変量解析から、OSに関連する独立因子はfirst-line治療時のLDH高値(RR 0.41、95%CI 0.24〜0.66、p=0.0005)およびsecond-line治療時のALP高値(RR 0.54、95%CI 0.31〜0.95、p=0.048)であった。
以上のように、FOLFOX療法歴のある転移性結腸・直腸癌患者に対するsecond-line FOLFIRI-3レジメンはPFSを延長し、奏効率を改善した。Bevacizumabやcetuximabなどの分子標的治療薬は、細胞障害性の化学療法剤の抗腫瘍効果を一律に増強することから、これらの至適な併用法を決定することが重要である。FOLFIRI-1のmIFLに対する優越性は、両レジメンにbevacizumabを併用しても同様であったとの報告があることから、FOLFIRI-3とbevacizumabまたはcetuximabとの併用は、FOLFIRI-1やその他のCPT-11ベースとの併用よりも優れていると考えられる。今回の結果は、この2つのFOLFIRIレジメンに適切な分子標的治療薬を併用して比較する第III相無作為化試験の実施を支持するものである。
FOLFIRI-3の有用性は、第T相からの臨床試験とD1、D3来院のコストに見合うか?
本論文は、切除不能大腸癌に対しfirst-line 治療としてFOLFOX7またはFOLFOX4を行った症例に対し、CPT-11を含むsecond-line 治療を行った症例を3群に分けて比較し、その効果を論じている。主要評価項目はPFSとし、OSおよび奏効率も比較している。D1とD3にCPT-11を分割投与するFOLFIRI-3の群でPFSが有意に長かった。本試験の限界として、second-line 治療の選択が無作為でなく主治医判断によるものであったこと、有害事象が登録・評価されていないことである。
FOLFIRI-1においても、欧米ではCPT-11投与量が180mg/m2に対し、本邦では150mg/m2である。一部の施設では180mg/m2で臨床試験を実施しているようだが、さらにD1、D3に100mg/m2ずつ投与する方法で第I相、第II相の臨床試験を実施する必要がある。また、bevacizumabやcetuximabといった分子標的薬を併用する場合に対しても臨床試験として実施する必要がある。これらの臨床試験および実地臨床で、D1とD3に来院してもらい、CPT-11の分割投与をおこなってもよしとするには、PFSで0.7ヵ月の差というのは魅力に欠けるのではなかろうか。しかし、合併症等でbevacizumabが使用できず、EGFR陰性またはKRAS変異でcetuximabの効果が期待できない症例も多く、CPT-11の分割で有意にPFSが延長するのであれば、試してみる価値はあるかもしれない。
監訳・コメント:茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 天貝 賢二
(消化器内科・部長)
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