虎の巻 編集会議 
第1回 術後化学療法の巻
1.術後補助化学療法の対象症例、注射薬と経口薬の選択

久保田 2種類の経口薬の選択についてはいかがですか。

吉野 費用と服用回数、受診回数、副作用などをすべて説明して、患者さんに選んでいただくのですが、その説明に非常に時間がかかっていて、外来患者さん1人につき1時間ということも少なくありません。カペシタビンには手足症候群の問題があり、UFT/LVにはそれはないけれど、薬価がカペシタビンよりは高いなど、起こりうることはすべてお話しするように心がけています。

小松 自分で調べてみたのですが、70歳以上なら、医療費はカペシタビンでもUFT/LVでも変わらないようですね(表2)。日本人の場合は、手足症候群が耐えがたい副作用になる可能性もあります。また、カペシタビンは、X-ACT試験では重篤な高ビリルビン血症が5-FU/LVに比べて3倍ぐらい多く3)、肝機能への何らかの影響も考えられますので、その導入には注意が必要かもしれません。 

加藤 ただ、UFT/LV錠でも副作用が問題になる患者さんはいますし、カペシタビンに関しては、消化管毒性のほうが手足症候群より問題となりそうです。

小松 これまで日本は、民族性、民族性と強調して治療してきたのに、カペシタビンになると急に民族性を無視して海外のデータで治療を始めています。それは、もしかすると危険なところがあるかもしれません。それに、錠剤が大きくて飲みにくいという人もいますね。

加藤 投与量が多すぎますね。多い人だと1回7〜8錠、1日14〜16錠も飲まないといけません。

佐藤 でも、個数が多い分、投与量の調整がしやすいというメリットもありますよ。私はphaseIから関わっているのですが、経口FU剤は有効域と毒性域が狭いのが一般的で、これはカペシタビンも同様です。でも、服用個数が多く微調整がとれると、副作用を発現している患者さんにおける過分な投与量と、減量による不足投与量の調整がとりやすくなります。

加藤 その辺のさじ加減は必要でしょうね。UFT/LV錠はほとんどさじ加減が必要ないので、その感覚でカペシタビンを使うのは危険ですね。 

久保田
 それでは、経口薬のコンプライアンスの問題にはどのような対策をされていますか。

西村 製薬メーカー配布の手帳などを利用して、患者さん自身に必ずチェックしていただいています。一般外来では外来化学療法室のようなメンテナンスができないので、自己管理をしっかりと行ってもらうことが大切です。逆に、自己管理ができない患者さんは何かあったら取り返しがつかないので、経口薬は遠慮してもらうほうがよいと思います。 

吉野 術後補助化学療法は6ヵ月間が基本だけれど、5ヵ月以上治療すれば効果が保てるのも事実なので、患者さんには「例えば、カペシタビンを服用して手足症候群で中断せざるを得ない場合には、UFT/LV錠に切り替えてでも、期間を保つことが重要です」と強調しています。

久保田
 胃癌の場合、アジュバントの投与期間はほとんどが1年ですが、大腸癌はなぜ6ヵ月なのでしょうか。

吉野 大腸癌は1年投与と6〜8ヵ月投与の比較試験で、6〜8ヵ月のほうがよかったということで、6ヵ月になっています4)

表2 高齢者の自己負担限度額

   
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