虎の巻 編集会議 
第1回 術後化学療法の巻
1.術後補助化学療法の対象症例、注射薬と経口薬の選択

久保田 70歳以上の高齢者における術後補助化学療法について、どのようにお考えでしょうか。

加藤 70歳ぐらいであれば特に区別せず、若年者と同じように治療しています。80歳になれば、個々の患者さんに合わせて治療方針を決定しています。

斎藤 そうですね。70歳ぐらいなら元気な人は多いです。

久保田 高齢者には投与量を減量されていますか。

小松 減量することはあまりないですが、70歳で元気な人でも、ポートや副作用対応などの指導の意味も含めて、入院して治療してもらうことはあります。

佐藤 最初だけ入院していただくのですか。

小松 導入時のみ入院していただきます。入院期間に副作用の発現状況もチェックできますので。80歳を超えると、経口薬を勧めたり、あるいは術後補助化学療法自体をしなくてもよいのではないかという話をしますが、70歳ならば普通の成人と変わらないと考えています。

久保田 2008年4月の診療報酬の改定(図)で、DPCにおける大腸癌の化学療法でFOLFOXとしての別の枠が新設されると聞いています。

佐藤 もし2泊3日で採算がとれるのであれば、だいぶ助かりますね。患者さんの間では、2泊3日であれば入院したほうがいいという意見は多いと思います。(※2008年4月の改定では、mFOLFOX6の採算可能な入院期間は6日となった)

小松 現在は、海外のエビデンスと日本のエビデンスとどちらを取るかで混乱していますね。

 転移・再発治療と術後補助化学療法では、保険承認やガイドラインの問題もありますが、海外エビデンスの日本での受け入れ、取り扱いに違いがあります。つまり、術後補助化学療法では国内のエビデンスが主流で、海外のエビデンスはごく一部の施設のみが受け入れているのに比べて、転移・再発になると、殆どの施設が海外のエビデンスを受け入れています。転移・再発にしろ術後補助化学療法にしろ、海外での標準治療は国内では何のエビデンスもない状況は全く同じなのに。

小松 日本の術後補助化学療法のエビデンスは、5-FU/l-LV vs UFT/LVがこれから出ますよね。その前に、海外のエビデンスだけで日本のエビデンスがないのにカペシタビンが入ってきてしまって、それを私たちは取り入れようとしているわけですが、そこの整理が難しいところです。

加藤 タイムラグは如何ともしがたいですから、悩ましいですね。

久保田 これまでの先生方のお話をまとめますと、stageIIIに原則として術後補助化学療法を行い、ハイリスクstageIIは要検討ということですね。治療内容は、5-FU/l-LV、UFT/LV錠、カペシタビンの3種類。また、経口薬と注射薬に関しては、患者さんに説明して選んでもらうということですね。さらに、カペシタビンとUFT/LVの使い分けについては、手足症候群などの副作用を考慮して選択を考える必要があるだろうということ。また、経口薬はコンプライアンスを十分に確保することが重要だということですね。
  では、この内容で虎の巻を作ってみましょう。先生方、本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。


図. 2008年診療報酬改定後の入院化学療法のDPC点数と出来高点数の比較
  2008年の診療報酬改定では、FOLFOXとベバシズマブを用いたレジメンに対して新たな枠が創設された。
これにより、mFOLFOX6、mFOLFOX6+BEV、FOLFIRI+BEVなどで、DPCで定められた入院期間内に採算がとれるようになった。
注)下記の試算結果はあくまで目安です。出来高点数は、患者の体表面積、その他の投薬内容、実施検査項目などによって異なります。ご了承ください。
 

プラスに転じる最短入院日数
  入院日数 DPC累計点数 出来高累計点数 差額
mFOLFOX6 6日 33,200 32,784 416
mFOLFOX6+BEV 7日 58,619 53,561 5,058
FOLFOX4 6日 33,200 36,527 -3,327
FOLFIRI 10日 34,818 34,499 319
FOLFIRI+BEV 5日 44,885 44,764 121
◆体表面積1.7m2、165cm、64kg、検査/その他薬剤点数4000点として計算
◆入院料は1日1752点として計算(10:1看護入院基本料1300点+14日以内入院加算452点)


 
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