副作用対策の巻 大腸癌分子標的治療編
第7回 副作用対策の巻 2010年12月10日 ホテルラフォーレ東京にて
3. 副作用マネジメント全般

看護師からみた分子標的治療薬の副作用マネジメント

佐藤 副作用の対策として、予防やフォローアップなども必要になってきますが、最前線で患者さんに接するのは看護師です。実際にはどのように対応されていますか。

中谷先生 中谷 患者さんは、副作用については医師から一通り聞いてこられますので、私は「特に気になったものはありますか?」とお尋ねして、そこから説明していきます。「ざ瘡が嫌だ」、「消化管穿孔が怖い」など、気になる点は人それぞれですので、まずは患者さんが一番懸念されているものを解決します。それから、次回の受診日までに起こる可能性のある症状を説明して、遅発性の副作用はその都度説明します。
 分子標的治療薬を使用するようになって副作用の種類が増えましたが、一度にすべてを説明しても、なかなか覚えきれません。ですから、特に心配されているもの以外は、起こる順に従って説明するようにしています。

佐藤 ポイントをたくさん挙げてくださいましたね。まずは、「医師の説明をどう受け止めているかを確認する」こと。もうひとつは、「副作用が起こる時期に合わせて順に説明していく」ということですね。加藤先生は、医師の側で気をつけている点はありますか。

加藤 基本的に私は概略をお話しするのみで、詳細を説明することはありません。実際の指導はすべて看護師に任せています。

患者説明用資材

佐藤 皮膚症状の患者教育のために、資材などを用意されていますか。

中谷 さまざまな外用薬が処方されるので、薬の写真と塗布する量、塗布のしかたなどを示した資材、それから保湿ケアに関する資材も作成しました。

佐藤 辻先生は医療連携を積極的に行われていますが、資材面で何か工夫されていますか。

 私たちは種々の資料を作成しておりますが、これらの多くは国立がん研究センターなどで作成されたものなどを参考にさせていただいたものです。これらは院内のみならず、連携先にも配布しています。資料を一からつくるのは大変ですので、こういった情報を共有できるのはよいことですね。

加藤 当院でもそういった資料をお手本に、スタッフの手づくりという感じの資材をつくっています。あまりきれいにつくりすぎないほうが、何となく人間味がこもるように思います。

中谷 イラストがいろいろ載っていると、興味をもっていただきやすいですね。「これ、看護師さんがつくったの?」と聞かれることもあります。「そうですよ。この通りにやってくださいね」と言うと、よく読み込んでくださいますね。

インフォームドコンセントと精神的サポート

佐藤 中谷先生から、インフォームドコンセントの工夫や医師に対する要望などをお話いただけますでしょうか。

中谷 私はがん化学療法看護認定看護師ですが、当院では緩和ケア認定看護師ががん相談の窓口になっており、インフォームドコンセントや精神的サポートを担当しています。大腸癌は治療の種類も多いので、早い時期からいろいろな専門の看護師がかかわることが大切だと思います。最初から緩和ケア認定看護師と一緒にかかわっていくと、「看護師さんはこんなに話を聞いてくれるのね」と、非常に喜んでくださいます。

加藤 最近は、医師1人でインフォームドコンセントをすることはなくなりましたね。看護師と一緒に行うと、その後もフォローしてもらえるので助かります。

チーム医療と情報共有

佐藤 では、チーム医療を円滑に行ううえで、看護師・薬剤師との連携のポイントを教えていただけますか。

高橋 看護師は定期的なカンファレンスを行っており、時々医師が1人参加して治療についてのレクチャーをしていますが、残念ながら合同での定期カンファレンスは行っていません。ただ、化学療法の有害事象に関しては迅速に情報を共有し、「どのような対処をしたか」「今後はどうすればよいか」ということを皆で勉強しています。必要があれば院内で専門家を呼び、ワンポイントの講義もしてもらっています。

辻先生  当院では毎日、患者さんの治療が終わって看護師の手が少し空いてくる時間帯にカンファレンスを行っています。これには医師、看護師はもちろんですが、可能な限りCRCや薬剤師、事務のスタッフも参加しています。

吉野 新薬の導入時は2週に1回の頻度でカンファレンスを行いますが、慣れてきたら月1回ぐらいですね。医師と看護師、薬剤師は必ず出席し、皮膚科医やソーシャルワーカーなども時折出席します。

佐藤 看護師のお立場から、カンファレンスに対する希望はありますか。

中谷 精神的なサポートが非常に重要ですので、患者さんのメンタル面の情報を医師に伝えられる場があるとよいですね。例えば、症状が強くても医師の前では「大丈夫です」と我慢して、看護師の前で泣かれる方もいらっしゃいます。そのような場合は、できるだけ医師に伝えるようにしていますが、主治医全員とすぐに連絡がとれるわけではないので、カンファレンスができたらと思います。

 当院では、看護師が血管確保や採血と同時に問診も行っています。問診時に何かあれば、患者さんが診察室を出る前に、「先生、○○の症状があるそうですよ」と言って情報発信してくれています。患者さんは、時に医師には症状をあまり言いたがらないこともありますし、皮膚症状や神経毒性などにおいては看護師からの情報が最初であることも多く、これらは非常に有用です。抗EGFR抗体薬は副作用のマネジメントが難しい面もありますが、看護師や薬剤師と連携して患者教育をしっかり行い、皮膚科などの協力が得られる環境であれば、治療を上手に継続できるのではないかと思います。

佐藤 分子標的治療薬、特に抗EGFR抗体薬を上手に使うためには、コメディカルや皮膚科、また地域医療機関との連携によるきめ細やかなマネジメントが大切ですね。本日はどうもありがとうございました。

   
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