Infusion reaction
瀧内:Cetuximabには従来の薬剤にはない副作用もあります。その1つが、マウスとのキメラ抗体であることによるinfusion reactionです。
植竹:ヒト化抗体であるbevacizumabでは、初回にinfusion reactionが発現することはほとんどありませんでしたが、cetuximabでは皮膚の膨潤、発赤などの症候がみられることがあります。特に初回で発現することが多いので、注意深く観察しなければなりません。Infusion reactionの対処法としてステロイドの併用が推奨されていますが、weeklyレジメンであるため、デキサメタゾン8mgを毎週投与する場合は、血糖値に注意が必要です。2週ごとの投与でも糖尿病を発症するケースがあるようです。とはいえ、ステロイドを中止してよいかは、非常に悩ましいところです。
瀧内:昨年、Leonald Saltz先生と話す機会があったのですが、infusion reactionが多い初回〜3回目まではステロイドを使い、それ以降にinfusion reactionが発現しなかった場合にはステロイドを中止するとおっしゃっていました。そういう試みも必要かもしれませんね。
現在、完全ヒト型抗体であるpanitumumabが承認申請中ですが、infusion reactionはほぼ大丈夫だと考えてよいでしょうか。
植竹:Panitumumabは、infusion reactionが少ないというデータがありますし、日本でもそうなることを期待しています5-6)。
皮膚障害
瀧内:皮膚障害も抗EGFR抗体医薬の特徴的な副作用です。皮膚障害について、国内外の臨床試験成績をご紹介いただきたいと思います。
山口:皮膚障害は、抗EGFR抗体医薬の投与後1〜2週間に発現し、その多くは速やかにGrade 1、2と上がっていきます。ただ、国内外の臨床試験では、皮膚障害で治療を中止した例はほとんどありません。そのため、きちんとケアすれば制御可能な副作用といえるでしょう。
瀧内:スキンケアについてですが、予防的なケアが必要なのか、それとも発現してから対症療法的に対応すればいいのでしょうか。
佐藤:今年のASCO-GIシンポジウムで、予防的ケアと対症療法を比較したSTEPP試験7)(図1)の成績が報告されています。Grade 2以上の皮膚毒性の発現率は対症療法群が62%であったのに対し、予防的ケア群は29%と半分に抑えられました。
STEPP試験でのSkin treatmentは、起床時の保湿剤、外出時の日焼け止め、就寝時のステロイド外用、およびドキシサイクリンの経口投与であり、ステロイドの経口投与などは含まれていません(表1)。実臨床で取り入れやすい方法なので、ぜひ実施したいと思います。
瀧内:スキンケアは患者教育も含めて、チーム医療として実施したいですね。
山口:私も皮膚症状の積極的な予防対策が必要だと思います。皮膚を清潔に保つ、ざ瘡様皮疹は刺激の少ない石鹸で洗う、皮膚の露出を避ける服装にするといった基本的なことも行うべきですね。
瀧内:皮膚障害に関しては、重症度と治療効果が相関するという興味深い報告もありましたね。
佐藤:BOND試験やCRYSTAL試験8)の後解析から、「皮膚障害の程度が強いほうが効果が高い」というデータが出たために、EVEREST9)というプロスペクティブな試験が実施されたわけです。cetuximabの常用量(250mg)で皮膚反応が現れなかった患者を対象として、常用量での投与を続ける群(対照群)と500 mgを上限として増量する群に割り付けて比較したところ、増量群のほうがGrade 3以上の皮疹が増加した一方で、奏効率は対照群に比べて改善がみられました(13% vs. 30%)。また、皮膚障害のGradeが高い患者のほうが奏効率が明らかに良好であったことから、皮膚障害が治療効果予測因子になるのではないかと考えられています。
KRAS との因果関係については、KRAS 変異が治療効果予測因子になることは明らかであるが、KRAS と皮膚毒性には相関が認められなかったと報告されました9)。それと同時に、用量依存的に皮膚毒性が高まることも示されたわけで、適正使用量が今後の問題になるのかもしれません。
瀧内:重要な発表でしたが、日本では初回400mg、それ以降は250mg が承認用量だということを忘れてはいけませんね。