消化器癌治療の広場

第16回座談会 Regorafenib承認を受けて 2013年5月13日 ストリングスホテル東京インターコンチネンタルにて

2.Regorafenibの薬剤特性

山崎(健)先生

●Regorafenibの作用、代謝および第I相試験

吉野:最初に山崎健太郎先生から、Regorafenibの薬剤特性を紹介していただきます。

山崎 (健):Regorafenibは、複数の腫瘍増殖・進展に関与するシグナル経路を標的とする、大腸癌領域で初の経口マルチキナーゼ阻害剤です。Regorafenibは、腫瘍増殖に関与するキナーゼ (KIT、RET、BRAFなど)、腫瘍の微小環境に関与するキナーゼ (PDGFR-β、FGFR)、血管新生に関与するキナーゼ (VEGFR1-3、TIE2) など、複数のキナーゼを阻害します。基礎研究においても、さまざまな癌腫の細胞株や、血管内皮細胞の増殖を抑制することが報告されています1)。また、乳癌、結腸癌、肺癌などのヒト腫瘍皮下移植マウスモデルにおいて、非常に高い抗腫瘍活性を示しています2)
 Regorafenibの代謝には、主にCYP3A4 (酸化的代謝) とUGT1A9 (グルクロン酸抱合) が関与し、主な代謝産物はM2 (N-oxide)、M5 (desmethyl N-oxide) と考えられています3)。これらの代謝産物もヒト結腸癌皮下移植マウスモデルにおいて、Regorafenibと同様の抗腫瘍活性を有することが報告されています。
 進行性固形癌を対象とした第I相試験では、3週投与・1週休薬のスケジュールで10mg/dayから220mg/dayまでの用量が検討され、最大用量の220mg/dayでは12例中5例で治療開始4週間以内に減量・休薬・中止に至った有害事象が発現しました4)。一方、160mg/dayでは同期間に減量・休薬・中止に至った有害事象が発現したのは35例中7例であったため、160mg/dayが推奨用量となりました。
 その後、同試験において切除不能進行・再発大腸癌を対象とした拡大コホートでの検討が行われ、画像評価可能な27例における病勢コントロール率は74% (PR4%, SD70%)、PFS (progression-free survival) 中央値は107日と、有望な結果が示されています5)。また、日本人の第I相試験では、15例に160mg/day投与したところ安全性プロファイル等も海外と同様であったことから6)、国際共同第III相試験のCORRECT試験が計画されました。
 なお、消失半減期は約20〜40時間 (平均24時間) であり3)、空腹時と高脂肪食摂取後の投与では、低脂肪食摂取後の投与に対してRegorafenibおよび代謝産物の曝露量が減少することから、低脂肪食摂取後の服薬が推奨されています。

次へ 前へ 目次
▲ このページのトップへ
MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc
Copyright © MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc. All Rights Reserved