●GISTにおけるRegorafenibの特性
室:GRID試験の試験デザインについて、クロスオーバーを認め、主要評価項目をPFSとされた理由を教えてください。GISTではOSが長いため、有意差が得にくいことや、第II相試験での効果が高かったため、倫理的な配慮をされたことが理由なのでしょうか。
西田:倫理的な部分が大きいと思います。Sunitinibの臨床試験においてもクロスオーバーを認めたものの、placebo群との有効性の差が大きかったためplaceboの使用を非難されていましたから。
馬場:Imatinib、SunitinibはKIT の変異部位によって有効性が変わりますが、RegorafenibはKIT 変異にかかわらず効果があり、また増悪後も効果を期待できるところが興味深いです。
吉野:増悪後も治療を続ける場合、いつまで治療を継続するかが問題になると思いますが、いかがでしょうか。
西田:個人的な意見としては、PSと有害事象が目安になると思います。具体的にはPSが1.5〜2まで低下したら中止したほうがよいと思いますし、grade 3の有害事象が発現した場合も、治療継続は難しいと思います。
吉野:増悪後も治療効果があるということは、今後の試験デザインに大きく影響しますね。
西田:実際に、ImatinibおよびSunitinib耐性になった患者に対して、NilotinibとBSC ± Imatinib/Sunitinibを比較したところ、PFSに差を認めませんでした14)。複数の転移巣があるGISTでは、複数のチロシンキナーゼ阻害剤治療後の二次遺伝子変異は、それぞれの転移巣が薬剤に関して感受性の異なるheterogeneousな状態になるため、評価が非常に難しくなると思います。
室:GRID試験で増悪後も治療を継続したのは、Regorafenibの特性からなのでしょうか。
西田:薬剤特性というよりも、sarcomaの治療では多く行われていると思います。
山崎 (健):Imatinibでも、増悪後に投与継続されていましたね。
西田:Imatinibは1st-lineで使用されるため、腫瘍は治療前の変異しか持っておらず、heterogeneityはそれほど高くないと考えます。薬剤投与後に耐性が出現すると、転移巣の部位によって異なる変異が出現し、一部に効いて、一部に効かないという現象が起きるのだと思います。
山崎 (健):CORRECT試験におけるバイオマーカー解析でも、腫瘍組織における変異と血漿における変異の比率が異なるという報告がありました15)。
西田:治療ラインが後になるほど、heterogeneityが前面に出てくる印象があります。
山崎 (健):GISTでは、既にKIT exon 9、exon 11がバイオマーカーになっていますが、ImatinibやSunitinib、そしてRegorafenibで新たなバイオマーカーはありますか。
西田:Sunitinibは耐性となるニ次変異の場所がわかっているので、バイオマーカーとしての遺伝子変異の役割はImatinibとSunitinibでは比較的クリアカットですが、Regorafenibはまだ明確ではありません。
吉野:Regorafenibは複数のチロシンキナーゼを標的にした阻害剤ですが、どのターゲットがkeyであるとお考えですか。
西田:GISTに関しては、oncogene addictionがあるKIT が主だと思っています。その意味では、大腸癌のほうが難しいですね。
吉野:2013年米国臨床腫瘍学会では、CORRECT試験のサブ解析でバイオマーカーの候補が報告されることになっています (#3514)。