●キナーゼ阻害剤における手足症候群
吉野:ここからは、Regorafenibを実臨床で使用する際に注意すべきポイントについて話し合いたいと思います。まず、特に重要な手足症候群 (HFS) と皮疹のコントロールについて、山崎直也先生から解説お願いします。
山崎 (直):分子標的薬登場前は、消化器癌領域におけるHFSとしてフッ化ピリミジン系製剤の副作用が知られていましたが、Sorafenib、Sunitinib、Regorafenibなどキナーゼ阻害剤のHFSは病態や症状が違うことを確認する必要があります。
フッ化ピリミジン系製剤のHFSの初期症状は、痛みとは異なる不快な感覚異常 (しびれ、ちくちく、ぴりぴり感) であることが多く、進行して症状が強くなった場合、休薬後の症状改善は比較的ゆるやかという印象がありました。
一方、キナーゼ阻害剤のHFSの初期症状は、加重・加圧部位に限局した発赤、紅斑と軽度の痛みで始まり、それが急激に角化していきます。ただ、所見の激しさに反して、休薬後の自覚症状は比較的速やかに軽快します。したがって、早めの休薬と適切な減量によって、治療の再開や継続は比較的可能だと思われます (表3)。
HFSに対しては、ステロイドや保湿剤による治療とともに、入浴の温度は低めに設定し、入浴後にも保湿剤を使うなどスキンケアが重要になります。また、靴は柔らかいものにする、締め付けの強い肌着などを着用しない、長時間の歩行を避けるなど、皮膚に負担をかけないようにするとよいでしょう。なお、治療前に足に何らかの角化性病変がある場合は、治療開始前に適切な処置をしておくことが必要です。
小松:シャンプー、石けん、化粧品類はどのようなものを使えばよいですか。
山崎 (直):原則としてノンアルコール、低刺激、無香料といったことがキーワードになります。ラベルを見てなるべく余計なものが入っていないことがポイントです。また、日焼け止めを塗って、直射日光を避けることも大切です。