瀧内:Peeters先生、ありがとうございます。続いてディスカッションに入る前に、日本の現状について吉野先生にご紹介いただきます。
吉野:日本の大腸癌治療薬の承認状況を米国と比較すると、約4年のdrug lagがあることがわかります(表10)。2010年4月には日本でもPanitumumabが承認され、欧米で使用されている主要な薬剤のすべてが使用可能となりました。
●Cetuximab発売から2年後にKRAS検査が承認
吉野:Cetuximabは2008年7月に、前治療で無効となったEGFR陽性の治癒切除不能な大腸癌患者への使用が承認されましたが、その際の適応はKRAS野生型に限定されませんでした。KRASに関してはすでに複数の報告があったにもかかわらず、KRAS検査自体が承認されていなかったためです。Cetuximabの投与患者数は増加を続け、2009年12月には7,000人を超えましたが、KRAS検査は投与患者の12%にしか実施されておらず、大きな問題でした。
2010年に入ってようやくKRAS検査が承認され、Cetuximabの使用に際しては、KRAS遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行うことになりました。また、1st-lineでの使用も追加承認されました。一方、Panitumumabの適応は「KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行再発大腸癌」とされ、すべての治療ラインでの使用が認められています。現在、日本で利用可能なKRAS検査は、主にダイレクトシークエンス法ですが、RFLPおよびSSCPも利用できます。検査費用は約200 USドルです。
●欧米と同等の治療薬が揃い、ガイドラインは複雑に
吉野:最後に、日本の進行再発大腸癌の治療の現状として、2010年7月に改訂されたばかりの日本の大腸癌治療ガイドライン19)の治療アルゴリズムをご紹介します。2009年までは比較的シンプルな形でしたが、1st-lineでBevacizumab、Cetuximab、Panitumumabの生物学的製剤3剤とXELOX(CapeOX)が使用できるようになり、NCCNのガイドラインに類似した複雑なアルゴリズムに改訂されました(図5)。