瀧内:先生方はEGFRやBRAFはルーチンに調べていらっしゃいますか。
Peeters:調べていません。EGFRは、抗EGFR抗体治療が始まった当初は重要だと考えられていましたが、有効性と明らかな相関が認められなかった25-26)ため、私も関心が薄れました。BRAFについても同じことだと思います。BRAF変異が治療効果予測因子なのか、予後不良因子なのかを検証するためのプロスペクティブな方法が必要です。EUの医療機関では現在、KRAS検査だけを実施しています。
馬場:私は日常臨床では、EGFR染色とKRAS検査をしています。
Peeters:EGFRが陰性の場合はどうされるのですか。
馬場:ご指摘の通り、EGFR染色の結果は生存に影響を及ぼさなかった26)ため、おそらく確認する必要はないと思いますが、日本ではCetuximabの適応が「EGFR陽性」に限られているため、検査を実施しています。
吉野:数ヵ月前に米国のNorth Carolina大学に行ったのですが、そこではKRAS野生型を確認した後もBRAFを定期的にチェックし、BRAF変異が検出された場合は決して抗EGFR抗体を投与しないようにしていました。CRYSTAL試験とOPUS試験の結果では、1st-lineにおけるBRAF変異は予後不良因子のようですが6, 27)、2nd-line以降ではBRAF変異型患者において抗EGFR抗体で奏効が得られたというデータはないので、2nd-line以降でBRAF変異が認められた場合は、私も抗EGFR抗体は使いません。
Peeters:BRAFの検査を行うという概念はわかりますが、BRAF変異が治療に影響を及ぼす可能性に関していくらかのデータがあることと、その検査を全ての患者に行う必要があるというエビデンスが実際にあることとは違います。「KRASの次にBRAFも検査する必要がある」とすべての人に自信をもって言うには、もう少しデータが必要です。
瀧内:同感です。それでは、Panitumumabからベネフィットを得られる患者を特定するためのよりよいバイオマーカーは必要だと思われますか。
Peeters:ええ。例えば、KRAS野生型患者で奏効率70%の効果があっても、患者さんが現在得ている以上のベネフィットを得るには、その集団内の他の集団を特定しなければならないと思います。腫瘍だけでなく、皮膚毒性に関してもバイオマーカーの必要性は高いです。また、最新の画像処理ツールによって、レスポンダーを特定するようなことが可能かもしれません。ある薬剤からベネフィットを得られる患者集団を特定するために、我々ができることは沢山あると思います。