1st-lineではどの分子標的治療薬を使用するか
瀧内: 本日は「Uniformed or Personalized? 大腸癌の病態に応じたアプローチを考える」と題し、わが国の実臨床をリードされている先生方と米国MD Anderson Cancer CenterのScott Kopetz先生をお迎えして、各テーマに関するショートレクチャーを挟みながら、全員でディスカッションをしていきたいと思います。
最初のテーマは、1st-lineにおける病態に応じた分子標的治療のアプローチです。今日では、FOLFOX / XELOX + BevacizumabやFOLFIRI + Bevacizumab、FOLFOX±Cetuximab / Panitumumab、FOLFIRI±Cetuximab / Panitumumabなど、1st-line治療にはいくつもの選択肢があります。先生方は実臨床でどの分子標的治療薬を1st-lineで使っておられますか。
Kopetz: 切除不能進行・再発大腸癌に対する化学療法は、NCCNガイドラインにある通り非常に複雑化しており、症例によって異なるアプローチが可能です。私は1st-lineではほぼ全例に何らかの分子標的治療薬を使用しています。最もよく使用するのはBevacizumabですが、抗EGFR抗体薬も使用しています。
瀧内: 日本の先生方はいかがですか。
掛地: 私は数年前からBevacizumabを1st-lineで使っていますが、2010年からはCetuximabやPanitumumabも1st-lineで使用し始めました。
吉野: 当院ではKRAS 遺伝子変異の有無にかかわらず、1st-lineで用いる分子標的治療薬はBevacizumabに統一しています。しかし最近は、肝転移のみの症例ではconversion therapyを念頭に置き、抗EGFR抗体薬とFOLFOXを併用するケースも出てきています。Conversion therapyにおいて抗EGFR抗体薬がBevacizumabより優れているというデータはありませんが、conversionが狙える状況では、やはり奏効率の高さは大きな魅力です。
小松: 私も1st-lineではBevacizumabを用いることが多いのですが、随伴症状があって急速に増殖するような症例では抗EGFR抗体薬を使っています。
瀧内: 日米とも1st-lineではBevacizumabが広く使われていますが、conversion therapyなど、抗EGFR抗体薬が選択されるケースもあるということですね。
さて、図1はSobrero先生の“Aggressive approach / non-aggressive approach”のチャートです。このチャートでは、個々の患者の病態に合わせてaggressive approachとnon-aggressive approachを使い分けるという、バイオマーカーとはまた違った形の個別化医療を示しています。
先生方は冒頭のお話の通り、すでに病態に応じた個別化医療を実践されていますが、残念ながら日本の実臨床ではまだ浸透しているとはいえません。今回は実際の症例を示しながら、1st-lineおよび2nd-lineにおいてaggressive approachが必要とされる症例と、aggressive approachとしての抗EGFR抗体薬の位置づけについて議論を重ねていきたいと思います。