消化器癌治療の広場

ASCO 2011特別企画座談会 Uniformed or Personalized? 
大腸癌の病態に応じたアプローチを考える

Theme 1  1st-lineにおける病態に応じた分子標的治療のアプローチ

1-1 Aggressive approach―Conversion therapy

瀧内: ここで症例を提示したいと思います。CASE 1は39歳の女性、S状結腸の腺癌で肝転移がみられます (図2)。肝機能および腎機能は良好でPS 0、KRAS 遺伝子野生型です。この症例に対する先生方の1st-line治療の選択肢をお聞かせください。

奏効率は切除の最良のサロゲートエンドポイント

Kopetz: 肝臓に限局した転移がみられる場合には、常に切除の可能性を検討します。治療をしても切除の可能性が低そうな症例も多いのですが、良好なレスポンスを示す可能性はあります。少しでも切除の見込みがある場合は、高い奏効率を得る方法を考えることが大切です。奏効率は切除の最良のサロゲートエンドポイントになります。したがって、私はこれまでのデータから、FOLFOX + CetuximabまたはFOLFOX + Panitumumabを選びます。

掛地: CASE 1は年齢も若くKRAS 遺伝子野生型ですので、私もFOLFOX + CetuximabまたはFOLFOX + Panitumumabを選択したいと思います。

吉野: これまではOPUS試験1)やCOIN試験2)、CRYSTAL試験3)のデータをもとにFOLFOX + Cetuximabを選んでいましたが、今回の米国臨床腫瘍学会年次集会で発表されたPRIME試験の最終報告では、FOLFOX + Panitumumabによる統計学的にも有意な奏効率の改善が示された4)ので、今後はFOLFOX + Panitumumabも選択肢に入れたいと思います。

小松: FOLFOX + CetuximabとFOLFOX + Panitumumabは高い奏効率が期待できるので、私もこの2つのレジメンを選びます。ただ、日本では承認されていませんが、FOLFOXIRIも非常に高い奏効率が示されていますね5)

Kopetz: そうですね。KRAS 遺伝子変異型でかつPSが良好な若い方に対しては、conversionを目的にFOLFOXIRIを行うこともあります。ただ、忍容性の問題があるため、1コース目はFOLFOXを行い、2コース目からIrinotecan (CPT-11) を追加しています。

瀧内: なるほど、それはgood ideaですね。CASE 1については、全員がconversion therapyとして抗EGFR抗体薬を含むレジメンを選択されました。
 さて、ここで掛地先生とKopetz先生に、それぞれのお立場からaggressive approachの代表ともいえるconversion therapyについて簡単なレクチャーをお願いし、さらに議論を進めていきたいと思います。

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