瀧内: 続いて、2nd-lineにおけるaggressive approachと抗EGFR抗体薬の位置づけにテーマを移したいと思います。まずは日本の現状について、吉野先生にレクチャーをお願いします。
日本における切除不能進行・再発大腸癌の2nd-line治療の現状
吉野 孝之先生
吉野: 当院における切除不能進行・再発大腸癌治療の現状について、2nd-lineを中心にお話します。日本で切除不能進行・再発大腸癌に使用可能な分子標的治療薬は抗VEGF抗体薬 (Bevacizumab) と抗EGFR抗体薬 (Cetuximab、Panitumumab) の2種類です。いずれの薬剤も米国から3〜4年遅れで承認されました。このうち当院で最もよく使われているのはBevacizumabで、抗EGFR抗体薬ではPanitumumabが多く使われています。
日本の大腸癌治療ガイドラインにおける切除不能大腸癌に対する治療戦略は、NCCNガイドラインとほぼ同じです。日本は腫瘍内科医の数が少ないため、大半は外科医が化学療法を行っています。
現在、日本において1st-lineで最も多く用いられるレジメンはFOLFOX / XELOX + Bevacizumabと推測されます。2nd-lineにおいては、Bevacizumabを含むレジメンや抗EGFR抗体薬を含むレジメンが実施されているようです。1st-line治療でPDが認められた後もBevacizumabを使い続ける戦略 (Bevacizumab beyond progression: BBP)25) をとっている医師も少なくありません。3rd-lineは抗EGFR抗体薬が中心で、CPT-11やFOLFIRIとの併用のほか、単剤でも使われているようです。
日本ではKRAS 遺伝子野生型であっても、Bevacizumabが1st-lineに最適な分子標的治療薬と考えられています。それは、1st-lineでの有効性においてBevacizumabを上回る抗EGFR抗体薬のエビデンスがないためです。
私自身はPanitumumabがKRAS 遺伝子野生型患者の2nd-lineに最適な分子標的治療薬であると考えています。その理由は、2nd-lineとしてのFOLFIRI ± Panitumumab を検討した20050181試験26) と、CPT-11 ± Cetuximabを検討したEPIC試験27) でのKRAS 遺伝子野生型患者の成績を比較すると、奏効率もOSもPanitumumab併用のほうが良好であるためです (図11)。
これら2つの試験にはいくつかの限界がありますが、20050181試験は前向きにKRAS 遺伝子検査を行って2nd-lineとしてのPanitumumabの臨床的意義を評価していることから、データの質という面での信頼性は高いと考えられます。
こうしたことから、当院では1st-lineでFOLFOX / XELOX + Bevacizumabを行ったKRAS 遺伝子野生型患者に対しては、2nd-lineとしてFOLFIRI / CPT-11 + Panitumumabを勧めています。
CetuximabとPanitumumabの相違点と類似点を要約すると、投与スケジュールはCetuximabが毎週投与であるのに対し、Panitumumabは2週毎投与である点が異なります。副作用に関しては、Panitumumabの方が皮膚毒性がやや強い印象がありますが、infusion reactionは少ないことが挙げられます (表3)。