BBPをどのように考えるか
瀧内: BRiTEは観察研究であるため、結果の解釈には注意が必要ですが、先生方はBBPを行っていますか。
掛地: 分子標的治療薬がBevacizumabしか使えなかった2、3年前はPD後もBevacizumabを使うことがありましたが、今は抗EGFR抗体薬という選択肢がありますので、治療戦略を再構築する必要があると思います。
小松: 私もBBPは行っていません。ところで、米国ではPD後もBevacizumabを継続することはできるのですか。保険適応上の問題等はありませんか。
Kopetz: 非常によいご指摘ですね。ご存知のように、NCCNガイドラインではPD後のBevacizumabの継続使用は推奨していません。ですから、保険会社のなかにはPD後のBevacizumabの使用はできないと自社のガイドラインに明記しているところもあります。
瀧内: 我々は今AIO 0504試験の最終結果を待っているわけですが、iBET試験30) のほうは中止になったのでしょうか。
Kopetz: iBET試験は2nd-lineでのCPT-11 / FOLFIRI + CetuximabとCPT-11 / FOLFIRI + Bevacizumabを比較・検討するものでしたが、当初から試験デザインに問題がありました。登録を中止したのは熱意が低かったからでしょうね。
瀧内: 私もiBET試験に関しては、Kopez先生のご意見に賛成です。デザインが二転三転して、試験コンセプトが最後まで固まりませんでしたね。やはりAIO 0504試験の結果を楽しみに待ちたいと思います。
終わりに
瀧内: 本日は、個別化医療を実践するひとつの方法として、患者の病態に応じたアプローチについて議論してきました。細胞毒性抗癌剤にBevacizumab を併用しても奏効率の上乗せはわずかであるのに対して、抗EGFR抗体薬を併用すると一貫して奏効率の向上が得られます。Conversionが狙える肝限局転移のKRAS 遺伝子野生型患者であれば、aggressive approachとして抗EGFR抗体薬の投与を勧めるということでした。また、随伴症状がみられ、腫瘍量が大きく急速に進行する症例に対しても、奏効率の高さや腫瘍が縮小するまでの速さを考え、抗EGFR抗体薬の投与が推奨されました (図15)。
Kopetz先生の「KRAS 遺伝子野生型の患者では、全治療期間のどこかで抗EGFR抗体薬を投与すべきであり、投与のチャンスを逃してはいけない」というご意見がありましたが、我々日本の医師もこれまでの治療戦略を見直すべき時期に来ているのではないかと思います。本日はご参加いただき、どうもありがとうございました。