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第2回 大腸癌化学療法の変遷(結腸癌に対する術後補助化学療法)

6. まとめ 佐藤武郎先生 北里大学医学部 外科学

図1 主なレジメンと生存期間 -Single agent
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表11 StageV結腸癌と補助化学療法
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図3 神経障害の残存割合
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 今回の改訂では高齢者に対する補助化学療法の項を設けた。本邦も含めて高齢化が進むなかで、治療指針の一助になればと考える。
 進行直腸癌については標準治療が確立されておらず、欧米と本邦での治療法に差異があるために、「結腸癌に対する術後補助化学療法」というタイトルとした。欧米では放射線療法を加えることが多いため、化学療法単独の補助療法のエビデンスは乏しい。一方、本邦では進行直腸癌に対する放射線療法のエビデンスは乏しく、またUFTを用いた直腸癌補助療法の生存期間の延長効果が高いことを証明した試験が存在するものの45-47) 、化学療法単独の試験も極めて少ないといえよう。直腸癌の術前および術後化学放射線療法を含めた内容は、今後別タイトルで述べることとする。
 Stage III結腸癌に対する補助化学療法のチャンピオンは大規模臨床試験の結果から、L-OHPレジメンである (図1)。しかし、本邦での検証結果がないため、神経毒性の遷延や今までの成績を参考にして、どのstageからL-OHPを使うかを決定している施設が多いと考える (表11, 図3)。本邦でもL-OHPを用いた補助化学療法の試験がスタートしており、今後はこれらのデータをもとにしたエビデンスを構築して、補助化学療法の薬剤選択ができることが望ましい。分子標的治療薬を用いた補助化学療法の臨床試験ではnegative dataが続いた。 今回、PETACC-8試験を追記したが、想像通りのnegative studyであった。QUASAR 2試験41) などの大規模臨床試験は継続して行われているが、最終的な結論は予測を覆すことはないと現状では考える。
 本邦では、stage II結腸癌 (RS癌を含む) に対する手術単独とUFTの12ヵ月投与を比較するSACURA試験をはじめ、stage IIIに対するJCOG 0205試験23)ACTS-CC試験、JFMC 37-0801試験、またstage II / III結腸癌 (RS癌を含む) を対象にmFOLFOX6の忍容性を検証するJOIN試験等が行われている。
 本稿の今回の改訂では、JCOG0205試験の結果とJFMC33-05002試験の結果も追記した。世界に誇るべき成績であることは間違いない。しかし、成功体験が失敗体験の始まりにならないように、本邦の大腸癌に携わる医師が一丸となって、さらなるエビデンスの構築に努める必要がある。

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