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第2回 大腸癌化学療法の変遷(結腸癌に対する術後補助化学療法)

6. 高齢者に対する術後補助化学療法 佐藤武郎先生 北里大学医学部 外科学

 Sargentらは2001年、5-FU + LV/Levamisoleによる術後補助化学療法と手術単独との比較試験のプール解析において、5-FV+LV/Levamisoleによる術後補助化学療法は高齢者と若年者で同様の効果が得られることと報告した68)。一方、大腸癌治癒切除後の術後補助化学療法においては、前述の通りL-OHP併用療法の優越性や29-35)、経口フッ化ピリミジン製剤の非劣性21-25)などが認められている。患者の高齢化に伴い、近年は高齢者の補助化学療法においても若年者と同等の効果が得られるかについて種々の検討が行われるようになっている。
 本項では、高齢者に対するL-OHPを用いた術後補助化学療法を中心に概説する。

4.2 Cetuximab
図表1
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 ASCO 2006において、4つの臨床試験29,69-71)に参加した大腸癌患者を高齢者 (70歳以上) と非高齢者 (70歳未満) とに層別化し、FOLFOX4の安全性と有効性、および用量強度を比較するプール解析が報告された72)なお、本稿は補助療法に関する項であるが、統合解析のため、進行再発の結果も含まれるため注意を要する。
 結果、PFSおよびDFSのHRはともに高齢者群で0.65、非高齢者群で0.7であり、有意差は認められなかった (p=0.42) 。また、進行癌における奏効率のオッズ比 (1.7 vs. 2.56, p=0.38) 、OSのHR (0.82 vs. 0.77, p=0.79) にも有意差は認められなかった。なお、術後補助化学療法におけるDFSのHRも同等であった (0.71 vs. 0.78) 。
 Grade 3以上の有害事象では、高齢者は非高齢者に対して好中球減少 (p=0.04) 、血小板数減少 (p=0.04) が高かったものの、その他の毒性については差が認められなかった。また、5-FUとL-OHPの用量強度に関しても、差はみられなかった。
 以上より、臨床試験に参加登録された比較的状態のよい患者を対象として解析した結果、FOLFOX4の有効性は70歳以上の高齢者に対しても70歳未満の患者と同様であり、高齢であることに起因すると考えられ、臨床的に問題となる毒性発現増加は認められなかった。

4.2 Cetuximab
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 ASCO 2009において、Adjuvant Colon Cancer End Points (ACCENT) のデータベースを用いて6つの臨床試験における70歳以上と70歳未満の結腸癌患者の再発率、生存率について解析した結果が発表された73)。結腸癌術後補助化学療法に関する6つの無作為化比較第III相試験22,25-27,29,32)から、70歳以上 (高齢者) の2,170例と70歳未満 (非高齢者) の10,499例について、5-FU/LV群を対照群とし、L-OHP併用群、CPT-11併用群、経口フッ化ピリミジン製剤群の3群において比較・検討を行った。なお、対象患者の約75%がstage IIIであった (高齢者77%、非高齢者74%) 。
 対照群と新規補助化学療法群 (3群全体) との比較では、非高齢者はOS、DFS、TTR (time-to-recurrence) いずれも有意に改善したのに対して、高齢者はいずれも低い傾向がみられた。新規補助化学療法群の年齢による相関においては、OS (p=0.005) 、DFS (p=0.005) 、TTR (p=0.004) のいずれも高齢者で有意に低かった。また、L-OHP群の年齢による相関でも、高齢者は非高齢者に対してOS (p=0.037) 、DFS (p=0.016) ともに有意に低かったが、TTRでは有意差は認められなかった (p=0.21) 。
 以上より、70歳以上の患者における術後補助化学療法について、5-FU/LVに対するL-OHP、CPT-11の上乗せ効果は認められず、また、経口フッ化ピリミジン製剤によるbenefitも認められなかった。また、L-OHP群のTTRには年齢による相関が認められなかったことから、L-OHPは早期再発リスクを減少するが、再発以外による死亡によりOSやDFSを改善できない可能性が示唆された。

4.2 Cetuximab

 ASCO 2009におけるACCENTデータベースの最新報告により、「術後補助化学療法において70歳以上の高齢者はL-OHPによる上乗せ効果がない」と結論づけられた。一方、Capecitabineは5-FU/LVに対してASCO-GI 2010において良好な効果を示しており24)、ASCO 2010では、XELOX (Capecitabine + L-OHP) vs. 5-FU/LVを比較したNO16968/XELOX試験における65歳以上および70歳以上の高齢者のサブグループ解析が発表された74)
 NO16968/XELOX試験全体の結果では、5年DFSがXELOX群66.1%、5-FU/LV群59.8% (HR=0.80, 95% CI: 0.69-0.93, p=0.0045) 、5年OSはXELOX群77.6%、5-FU/LV群74.2% (HR=0.87, 95% CI: 0.72-1.05, p=0.1486) と、XELOX群はDFSでは有意差を認め、OSでも良好な傾向がみられた。一方、年齢別のサブ解析では、65歳以上の3年DFSはXELOX群68%、5-FU/LV群62% (HR=0.81, 95% CI: 0.64-1.03) 、70歳以上ではXELOX群66%、5-FU/LV群60% (HR=0.87, 95% CI: 0.63-1.18) であり、65歳以上ならびに70歳以上においても、同様の結果が得られた。
 65歳以上および70歳以上の症例においては、治療期間の短縮ならびに治療強度の低下が認められたが、効果は良好であった。また、grade 3/4の有害事象は、高齢者に下痢が多くみられたものの、非高齢者とほぼ同様であった。65歳以上および70歳以上でもXELOXによる5-FU/LVに対する有効性を示しており、ACCENTデータベースの結果とは異なる結果であった。

4.2 Cetuximab
図表3
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 ASCO 2012では、5-FU/LVに対するXELOXおよびFOLFOXの有効性を検討するために、新たに4つの無作為化比較試験25,35,38,56)のプール解析が報告された75)
 DFSに対する単変量解析におけるHRは、70歳未満 (非高齢者) 0.68 (p<0.0001) 、70歳以上 (高齢者) 0.77 (p=0.14) 、OSのHRは非高齢者0.62 (p<0.0001) 、高齢者0.78 (0.045) であり、高齢者においても良好であったものの、非高齢者に比べてL-OHPの上乗せ効果は減少していた。なお、多変量解析では、DFSにおける年齢の相関は認められなかったものの、OSにおいては年齢の相関が認められた (HR=0.77, p=0.0004) 。
 Grade 3/4の有害事象は、5-FU/LV群では高齢者は非高齢者と同等であったが、L-OHP併用群では高齢者59%、非高齢者52%と高齢者が多い傾向にあり、なかでも神経障害 (45% vs. 41%) 、下痢 (20% vs. 11%) 、悪心・嘔吐 (11% vs. 7%) が多くみられた。

4.2 Cetuximab

 本邦も高齢化の一途を辿っており、これに伴う患者の高齢化も必然である。当然のように高齢者に対する手術が行われるようになったが、術後病理診断の後に頭を悩ませる症例も多いのではないだろうか。これらを鑑みるように、種々の臨床試験で高齢者に対する治癒切除後の補助化学療法に関する検討が行われるようになった。しかし、当初から企画された高齢者に対する臨床試験は実施されていない。加えて、臨床試験に参加できる人と、できない人によっても相違が出ることは容易に想像がつく。臨床試験ベースのデータは比較的良好な肉体的、身体的状態が備わった症例である。我々は、EBMに基づいた治療を実践すべきであるが、目の前にいる患者さんが、臨床試験における適格症例に準じた患者さんであるか、否かも十分に検討する必要がある。
 エビデンスは使うものであって、使われるものでないことを十分に理解して頂くことを強く申し添えたい。

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