GI-pedia|大腸癌のトピックに関するエビデンスや情報をまとめ、時系列などに整理して紹介します。

第6回 胃癌外科手術の変遷

6. 非治癒手術

6.1 緩和手術

 胃癌の局所進展に伴って出現する主な切迫症状として、腫瘍による狭窄で生じる通過障害と腫瘍からの出血による貧血の2つがある。治癒切除が困難であっても切迫症状を解除するために手術が必要なことがあり、これを緩和手術と呼んでいる。QOLの改善を目的とした手術であるため、患者の負担を少なく、安全に行う必要がある。

6.1.1 バイパス手術

 経口摂取不能な切除不能進行胃癌に対しては、経口摂取を可能とするためのバイパス手術 (胃空腸吻合術) が検討される。通常、胃空腸吻合術は胃体部の大弯側と空腸を吻合するため、吻合予定の部位に病変が及んでいないことが前提である。腫瘍から距離を置いて大弯側から胃を不完全離断して、Billroth II法+Braun吻合 (7.1.2参照) またはRoux-en-Y法 (7.1.3参照) で再建する術式が広く普及している。

6.1.2 姑息的胃切除

 胃上部の病変により通過障害をきたしている場合や4型 (びまん浸潤型) 胃癌で胃全体に病変が広がっている場合には、バイパス手術は困難であり、経口摂取を可能とするために姑息的胃切除が必要となることが多い。また、腫瘍からの出血によって貧血が進行している場合にもバイパス手術ではなく、姑息的胃切除が選択されることがある。姑息的胃切除ではリンパ節郭清を行わないが、切除不能進行胃癌症例では他臓器浸潤や高度リンパ節転移を認めることが多く、切除に難渋し、過度の手術侵襲が加わる可能性もあるため、全身状態を考慮して手術治療を選択する必要がある。

6.2 減量手術

 非治癒因子を有する胃癌に対する標準治療は確立していない。減量手術は、狭窄や出血などの症状を伴わない症例に対して行う胃切除術である。胃切除術を先行することにより、出血による貧血や狭窄による通過障害の出現を遅らせる可能性がある。さらに、非治癒因子が1つの場合には、減量手術が生存期間の延長に有用である可能性も示唆されていた。
 この減量手術の意義を明らかにするために、非治癒因子が1つまでの治癒切除不能な進行胃癌を対象に、化学療法単独治療群に対する姑息切除後化学療法群の優越性を検討する第III相試験 (JCOG0705試験) が行われた44)。この試験は、韓国やシンガポールの施設とも共同で行われた試験であった。結果は、2014年の67th society of surgical oncology (SSO) annual cancer symposiumで報告され、減量手術による生存期間の延長は認められず、減量手術は行うべきではないと結論付けられた。

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