Irinotecan(CPT-11)単剤
Bang YJ, et al.: Ann Oncol. 29(10): 2052-2060, 2018 |
CPT-11療法は、2週ごとにCPT-11 150mg/m2を静注する治療法である。CPT-11は重篤な副作用(特に好中球減少)のリスク予測のための遺伝子多型検査が保険診療で認められている。CPT-11はSN-38に代謝されて抗腫瘍効果を発揮するが、SN-38はUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)の一つであるUGT1A1によってグルクロン酸抱合を受けて不活化され、主に胆汁へ排泄される。UGT1A1遺伝子の多型がある症例では、SN-38の代謝が低下し、CPT-11の有害事象が強く発現する。UGT1A1*6とUGT1A1*28のいずれかがホモ接合型、もしくはダブルヘテロ接合型である場合は半量程度の減量が検討される。
腸管の通過障害を合併する症例では、胆汁に排泄されたSN-38が再吸収(腸肝循環)され、血中濃度が高くなり重篤な有害事象を引き起こす。腸閉塞や高度腹水症例に対しては禁忌となっている。また、胆汁排泄型の薬剤であることから黄疸症例に対しても禁忌となっている。
◆JAVELIN Gastric 300試験1)
JAVELIN Gastric 300試験は、進行胃癌・食道胃接合部癌患者の3次治療における抗PD-L1抗体Avelumabと医師選択の化学療法(CPT-11またはweekly Paclitaxel[wPTX])を比較した多施設共同国際第III相試験である。
化学療法群では、CPT-11(150mg/m2、day 1,15、4週毎)またはwPTX(80mg/m2、day 1,8,15、4週毎)のどちらかが認められたが、化学療法の対象とならないと判断された場合はBSCも許容された。371人が登録され、Avelumab群に185人、化学療法群に186人が割り付けられた。化学療法群の内訳は、120人(64.5%)がCPT-11、54人(29.0%)がwPTX、3人(1.6%)がBSCであった(9人はNo treatment)。
■有効性
JAVELIN Gastric 300試験1)における化学療法群の成績は、奏効割合(ORR)4.3%、無増悪生存期間(PFS)中央値2.7ヵ月、全生存期間(OS)中央値5.0ヵ月であった。サブグループ解析では、CPT-11群のOS中央値5.4ヵ月、wPTX群のOS中央値4.7ヵ月、また、Avelumab群の成績はORR 2.2%、PFS中央値1.4ヵ月、OS中央値4.6ヵ月であり、Avelumab群は化学療法群に対して、主要評価項目のOS、副次評価項目のPFS、ORR、いずれも優越性を示せなかった。以下に胃癌3次治療としてのCPT-11療法の報告を示す。
試験 | 試験デザイン | 治療ライン | N | レジメン | ORR | PFS | OS |
Bang YJ, et al.1) JAVELIN Gastric 300 |
Phase III | 3rd | 186 | * | 4.3% | 2.7ヵ月 | 5.0ヵ月 |
185 | Avelumab | 2.2% | 1.4ヵ月 | 4.6ヵ月 | |||
Nishimura T, et al.2) | Retrospective | 3rd | 52 | CPT-11 | 3.0% | 2.3ヵ月 | 4.0ヵ月 |
Makiyama A, et al.3) | Retrospective | 3rd/4th | 146 | CPT-11 | 6.8% | 3.2ヵ月 | 6.6ヵ月 |
Kawakami T, et al.4) | Retrospective | 3rd | 50 | CPT-11 | 18.4% | 2.0ヵ月 | 6.0ヵ月 |
*CPT-11(n=120)、wPTX(n=54)、BSC(n=3)、No treatment(n=9)
■安全性
JAVELIN Gastric 300試験1)におけるGrade 3以上の有害事象は、化学療法群で31.6%、Avelumab群で9.2%に認められた。化学療法群でのGrade 3以上の有害事象は、好中球減少が13.0%で最多であり、非血液毒性はいずれも4%未満であった。より日常診療を反映すると思われる、後方視的解析2-4)からの報告で多かったGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(19.2〜24%)、貧血(19〜30%)、食欲不振(5.5〜14%)、発熱性好中球減少症(6〜12%)などであった。
レジメン解説執筆:東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 西村 尚 先生
References
GI cancer-net
消化器癌治療の広場