坂本 では、FOLFOX とbevacizumabの併用効果を検討したNSABP C-08試験(#4006)に移ります。
大津 今回の発表は安全性のデータだけでしたが、
bevacizumab併用による消化管穿孔、出血、心血管系の虚血などの増加は有意ではなく、特に問題はないということでした。また、XELOX、FOLFOX、FOLFOX+bevacizumabの3群を比較するAVANT試験では、心毒性が問題となって一時期中止されたのですが、その後問題のないことがわかって再開しています。この2つの試験によって、術後補助化学療法におけるbevacizumabの併用効果については結論が出ると思います。
坂本 術後補助化学療法におけるFOLFIRIの有用性については、まだまだcontroversialですが、瀧内先生に#LBA4013をご紹介いただきます。
瀧内 これは、肝転移巣切除術後のFOLFIRIの有用性をLV5FUsと比較した試験です。術後補助化学療法としてのFOLFIRIは、過去にACCORD-2試験やPETACC3試験などが行われていますが、前者は5-FU/LVより劣るというネガティブ試験でしたし、後者もわずかな差で有効性が示せませんでした。また、CALGB
C89803試験のIFLもネガティブな結果で、転移癌ではIFLの有効性が示されていただけに、Saltz先生が「臨床試験は我々に真実を教えてくれる」とコメントをしていたのが印象的でした(#3500,
2004)。
さらに今回の#LBA4013では、肝切除後に対してもLV5FUsにCPT-11を併用することの有益性は証明されなかったので、もう術後補助化学療法におけるCPT-11の位置づけはないという形になったと思うのです。
坂本 大規模試験を行うことでさまざまな疑問に対する回答が得られたデータですね。先ほど、大村先生も1%、2%の差に本当に意味があるのかということについて触れておられましたね。寺島先生、次に#4049をご紹介いただけますか。
寺島 この報告は、米国の複数のがんセンターの腫瘍内科医150人に対し、「自分が結腸癌患者だったら、どのような術後補助化学療法を望むか」を尋ねたアンケートの調査結果です。
例えば、“55歳、stage III、郭清したリンパ節18個のうち15個に転移が認められた症例”という想定では、患者さんには「FOLFOX vs. FOLFOX+bevacizumabの臨床試験を勧める」が50%で最も多く、「FOLFOX+bevacizumabを勧める」は10%であったのですが、自分が患者の場合は、「FOLFOX
vs. FOLFOX+bevacizumabの臨床試験の被験者になる」は42%に低下し、「FOLFOX+bevacizumabを受ける」が26%と高率となりました。
また、“stage IIの結腸癌で8個しかリンパ節郭清していなかった症例”という想定では、約半数が「FOLFOXを勧める」あるいは「自分なら受ける」と答えましたが、18個郭清した場合には「化学療法を行わない」が70%でした。予後因子をよく把握しており、リスクの低いstage
IIであれば化学療法は不要という考えが徹底しているなと思いました。また、患者と自分自身では若干の相違があるのが興味深かったです。
坂本 生存で2%の差であっても、正確な臨床試験によって積み上げられていった信頼性の高いエビデンスであれば、よりよいほうを採用したいというのが、プロの腫瘍内科医の本音なのですね。
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