BBPの有用性を検証したBRiTE研究とTML試験
次に、Bevacizumabを含む1st-line治療がPDとなった後の治療についてお話しします。
フッ化ピリミジン系薬剤+CPT-11の前治療歴を有する切除不能大腸癌患者をFOLFOX+Bevacizumab群、FOLFOX 群、Bevacizumab単独群の3群に無作為に割り付けたE3200試験では、PFS中央値がそれぞれ7.3ヵ月、4.7ヵ月、2.7ヵ月、OS中央値は12.9ヵ月、10.8ヵ月、10.2ヵ月であり、いずれもFOLFOX+Bevacizumab群が優る結果になりました8)。本試験はBevacizumab未使用患者が対象でしたが、次に生じる疑問はBevacizumab併用化学療法でPDとなった後もBevacizumabの投与を継続した場合の有効性です。
それを最初に示したのが、大規模観察研究であるBRiTE研究です9)。OS中央値は、初回PD後に治療を行わなかった患者が12.6ヵ月、BBP以外の治療を行った 患者が19.9ヵ月であったのに対し、BBPを行った患者では31.8ヵ月と極めて良好でした[図4]。ただし、この試験には無作為化されていないという欠点があります。
今朝のoral sessionでは、BBPを検討した無作為化第III相試験であるTML試験の結果が報告されました。本試験は当初AIO 0504試験として開始されたもので、1st-line治療でBevacizumab併用化学療法を使用しPDとなった患者を無作為化し、2nd-line治療としての化学療法±Bevacizumabの効果を比較しました2)。その結果、主要評価項目であるOSは9.8ヵ月 vs. 11.2ヵ月 (HR=0.83, p=0.0211)[図5]、PFSは4.1ヵ月vs. 5.7ヵ月(HR=0.67, p<0.0001) とBevacizumab併用群で有意に延長しましたが、奏効率は3.9% vs. 5.4%であり、Bevacizumabの上乗せ効果はありませんでした (p=0.3113)。
2nd-lineとしてのFOLFIRI+Aflibercept療法の有効性を検証したVELOUR試験
一方、VEGF trapであるAfliberceptの2nd-lineにおける有用性を検討したVELOUR試験では、L-OHPベースの化学療法による1st-line治療でPDとなった患者を対象に、FOLFIRI+placebo群とFOLFIRI+Aflibercept群に無作為に割り付けました10)。その結果、主要評価項目であるOSの中央値は12.1ヵ月vs. 13.5ヵ月 (HR=0.82, p=0.0032) で、ハザード比はTML試験で認められたものとほぼ同等でした。また、PFS中央値も4.7ヵ月vs. 6.9ヵ月と延長しました (HR=0.76, p=0.00007)。
1st-lineにおけるBevacizumab投与の有無でサブグループ解析を行ったところ、全体の30%にBevacizumabの投与歴がありましたが、OS、PFSともに有意な交互作用は認められませんでした[図6]。有害事象はVEGF阻害薬で予想される範囲のもので、動脈血栓症、創傷治癒遅延、高血圧の多少の増加が認められました。
サルベージラインでのRegorafenibの有用性を検討したCORRECT試験
経口マルチキナーゼ阻害薬のRegorafenibについても触れたいと思います。CORRECT試験は、すべての標準治療にPDとなった切除不能大腸癌患者を対象にplacebo+BSC群とRegorafenib+BSC群を比較した第III相試験で11)、約半数の患者が4種類以上の前治療を受けていました。OS中央値はplacebo群で5ヵ月、Regorafenib群では6.4ヵ月 (HR=0.77, p=0.0052)、PFS 中央値はそれぞれ1.7ヵ月、1.9ヵ月 (HR=0.49, p<0.00001) であり、いずれもRegorafenibの投与により有意に延長しましたが、PFSの延長はわずかでした。PFS曲線は中央値を超えた後に大きく開いていることから、一部の患者ではRegorafenibの投与によってベネフィットが得られているのは明らかです。
しかしその一方で、Regorafenibの毒性は決して軽くはありません。手足症候群が46.6%に認められ、16.6%はgrade 3でした。疲労や下痢、高血圧も多く認められています。したがって、サルベージラインでRegorafenibの投与を行うには、ベネフィットを得られる患者の絞り込みが鍵になると思います。
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