2012年 米国臨床腫瘍学会年次集会 特別企画座談会 切除不能大腸癌治療における分子標的薬の位置づけ

切除不能大腸癌治療におけるVEGF阻害薬を中心とした分子標的薬の役割 Discussion / Jeffrey A. Meyerhardt, MD, MPH

2nd-lineにおける分子標的薬――BBPかAfliberceptか、それとも抗EGFR抗体薬か

馬場: ありがとうございました。Meyerhardt先生からは、VEGF阻害薬の効果に焦点を当てたレクチャーをしていただきました。質問やコメントはありますか。

吉野: 試験間の比較ではTML試験VELOUR試験のハザード比は同等ですが、毒性の面で考えると、私はBBPのほうがfeasibilityは高いと考えています。Bevacizumabを含む1st-line治療後の2nd-line治療として抗VEGF療法を続ける場合、Meyerhardt先生はBBPとAfliberceptのどちらがよいと思われますか。

Jeffrey A. Meyerhardt, MD, MPH

Meyerhardt: 私はTML試験のデータが出る前はBBPをしていませんでしたが、今後、KRAS 変異型に対してはBBPを行うつもりです。おっしゃる通り、TML試験VELOUR試験のハザード比が同等だったことで、2nd-lineでAfliberceptを使いにくくなりましたね。もし後のラインで使用するとしても、それを支持するデータはありませんし。ただ、現実問題として判断が難しいのは、KRAS 野生型の場合だと思います。2nd-lineで抗VEGF抗体薬の投与を続けるべきか、あるいは抗EGFR抗体薬に切り替えるべきか、選択が複雑です。

吉野: その点については、TML試験KRAS status別のサブグループ解析の結果が何らかのヒントになると思います。以前報告されたAVF2107g試験KRAS statusの後解析では、KRAS 野生型でOS中央値が27.7ヵ月と良好でした19)TML試験KRAS status別のデータも間もなく報告されると聞いたのですが、KRAS 変異の有無でOSに差が出るのか否か、今後の治療戦略を考えるのに役立つのではないかと期待しています。

Meyerhardt: それについてはYESでもあり、NOでもあります。私自身はKRAS statusによってBevacizumabのベネフィットに差があるとは考えていませんが、本当に差があるかどうかを知りたいという意味ではYESです。一方、1st-lineでBevacizumabを使用した場合、KRAS statusが問題となるのは2nd-lineで抗EGFR抗体薬の使用を考慮したときですが、TML試験の対照群はあくまで化学療法単独です。したがって、どのような結果であっても、「2nd-lineでBBPを行うべきか、抗EGFR抗体薬に切り替えるべきか」という問いの答えにはなりません。その意味ではNOですね。

室: TML試験の対象症例は、除外基準によってある程度絞られている点に注意が必要です。例えば、1st-lineでのBevacizumabの投与期間が3ヵ月未満の症例は除外されていましたね。日本では前々からTML試験の結果が注目されており、今後はBBPが増えることが予測されますが、この試験の結果に基づいてBBPを行うのであれば、一定の基準を満たしていることが要件となります。

Meyerhardt: 同感です。TML試験の適格基準は、臨床でデータを利用する際に押さえておくべき重要なポイントだと思います。1st-lineのBevacizumab投与期間が3ヵ月未満の症例におけるBBPのデータはありません。もしFOLFOX+Bevacizumab療法で治療を開始し、最初のCT検査で増悪がみられた場合には、BBPではなくFOLFIRI に切り替えたほうがよいでしょう。

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