吉野先生の発表にもありましたが、日本では大腸癌患者の大半にL-OHPベースの化学療法とBevacizumabの併用が行われています。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というのがその理由でしょうか。
ドイツのSchmoll先生による臨床的因子に応じた治療戦略では、「潜在的な切除可能性」「多発転移の有無」「進行の速さ」「腫瘍関連症状」などの臨床的因子によって、患者を3つのグループに分けています25)[図7]。一方、ESMOの治療ガイドラインでは、aggressive approach が必要か否かで2つのグループに分類されます26)。Aggressive approachとしては化学療法+分子標的薬の併用が、non-aggressive approachとしては5-FU/CapecitabineとBevacizumabの併用が推奨されています[図8]。
では、conversion therapyに適した分子標的薬は何でしょうか。NO16966試験ではL-OHPベースの化学療法にBevacizumabを併用しても腫瘍縮小に対する上乗せ効果は得られませんでしたが5)、CPT-11またはL-OHPベースの化学療法に抗EGFR抗体薬を併用することで、多くの試験で腫瘍縮小の上乗せ効果が得られています[図9]。特にCRYSTAL試験、PRIME試験、OPUS試験のKRAS 野生型患者における奏効率は60%前後でほぼ同等でした27-29)。
日本においても臨床的因子に基づいた治療選択が必要と考えます。同じ1st-line治療であっても、aggressive approachとnon-aggressive approachでは、治療目標も治療レジメンも異なります。Aggressive approachでは、腫瘍関連症状や腫瘍縮小に対して効果がなければなりません。さらに、奏効率と切除率が相関することは以前から知られており30)、抗EGFR抗体薬はconversion therapyの選択肢の1つになると考えられます。
対象を限定していない第III相試験の3つを比較すると [表1] 、奏効率57%のPRIME試験では、肝限局転移患者におけるR0肝切除率は28%でした28)。一方、対象を肝限局転移の患者に限定したCELIM試験31)、BOXER試験32)のR0、R1相当の肝切除率はいずれも約45%程度であったことから、CetuximabとBevacizumabの効果は同等と考えられます [表2]。
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