2nd-line でCPT-11ベース化学療法を受けた患者の予後因子を検討

切除不能大腸癌の治療薬には5-FU、CPT-11、L-OHP、Bevacizumabがあり、KRAS 野生型であれば抗EGFR抗体薬も使用可能です。KRAS 野生型に対する治療戦略としては、aggressive approachの場合、1st-lineでは化学療法+抗EGFR抗体薬、2nd-lineでは化学療法+Bevacizumabとなります。しかし、日本ではBevacizumabの使用が圧倒的に多く、特にFOLFOXまたはXELOXとBevacizumabの併用がよく行われています。2nd-lineではBBPまたは抗EGFR抗体薬が使われますが、2nd-lineとしてどちらの治療が最適か、またどのような患者を2nd-lineで分子標的薬の投与対象とするかは議論のあるところです。
そこで当院では、1st-lineでFOLFOX±Bevacizumabを施行後、2nd-lneでCPT-11ベース化学療法を受けた患者124例の予後因子に関する後ろ向き解析を行いました39)。登録期間は2005年10月-2008年12月ですが、Cetuximabの承認は2008年の夏で、Panitumumabはまだ承認されていませんでした。1st-line治療施行後のPFSは6ヵ月未満が49例、6ヵ月以上が75例であり、L-OHP投与中止の主な理由は病勢進行でした。2nd-line治療はFOLFIRIが71例、CPT-11が39例、IRISが14例であり、Bevacizumab併用例は21例でした。
結果ですが、2nd-line治療におけるPFS中央値は3.8ヵ月、2nd-line治療開始後のOS中央値は14.6ヵ月でした。2nd-line治療開始後、124例中115例がPDとなり、うち36例 (29%) でBSCが、82例 (71%) で3rd-line治療が行われました。
OSに関する多変量解析では、2nd-line治療開始時点で、「PS 2」「低分化腺癌」「腹膜播種」「LDH 400 IU/L以上」「1st-line未満のPFSが6ヵ月未満」が有意な因子として選択されました。これらの因子が0であれば低リスク、1つなら中リスク、2つ以上なら高リスクと定義したところ、高リスク群は予後不良で、低リスク群は予後良好でした[図11]。高リスク群で3rd-line治療が行われたのはわずか41%でした。一方、低リスク群と中リスク群の3rd-line治療移行割合は、それぞれ95%、67%でした。
抗EGFR抗体薬は3rd-lineでも有効だが、使用する機会を逃さないことが大事
以上の結果をもとにKRAS 野生型患者の治療戦略を考えたいと思います。重要なポイントは有効薬剤をすべて使い切るというスタンスです。低リスク群または中リスク群の場合、3rd-line治療移行割合が高いので、1st-lineではFOLFOX/XELOXまたはFOLFIRI+Bevacizumab療法が主流で、2nd-lineはTML試験に基づいてBBPでBevacizumab を化学療法と併用し、3rd-lineで抗EGFR抗体薬を用います。一方、高リスク群では、3rd-line治療移行割合が低いので、抗EGFR抗体薬の使用機会を逃さないことが大事なポイントであり、2nd-lineはBBPではなく抗EGFR抗体薬に切り替えることが勧められます。特に腫瘍関連症状のある患者では、腫瘍縮小効果の高い抗EGFR抗体薬が非常に重要になると思われます。
20050181試験では、2nd-lineでFOLFIRIにPanitumumabを併用することでPFSが有意に延長しましたが (HR=0.73, p=0.004)[図12]、その後FOLFIRI群において抗EGFR抗体薬が用いられたのはわずか31%でした40)。
現在、2nd-line治療としてのFOLFIRI+Panitumumab療法 vs. FOLFIRI+Bevacizumab療法を比較するSPIRITT試験41)が、日本ではL-OHPベース化学療法+Bevacizumabによる1st-line治療後のFOLFIRI+Panitumumab療法 vs. FOLFIRI+Bevacizumab療法を比較するWJOG6210G試験がそれぞれ行われています。
結論として、FOLFOX+Bevacizumab療法後のFOLFIRI+Panitumumab療法は奏効率、PFSにおいて最も効果の高い治療といえます。腫瘍量が多く、腫瘍関連症状のある高リスク患者では、抗EGFR抗体薬による2nd-line治療が勧められます。一方で、CPT-11+抗EGFR抗体薬は3rd-line治療においても有用性が示されており42,43)、低リスク患者では3rd-line治療で抗EGFR抗体薬を用いるのもよいと思われます。いずれにせよ、KRAS 野生型患者において、抗EGFR抗体薬を用いる機会を逃すことがないようにしなければなりません。
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