肝転移に対する術前術後補助化学療法
#3504:new EPOC試験
切除可能な肝転移を有する大腸癌患者における術前術後補助化学療法へのCetuximabの上乗せ効果
室:続いて、肝転移に対する術前術後補助化学療法を検討したnew EPOC試験です。
坂東:EPOC試験では肝転移を有する大腸癌に対し、術前術後にFOLFOX4を使用することで、3年PFSで約8%の上乗せ効果が示されましたが6)、new EPOC試験ではさらなる上乗せを狙いCetuximab併用の有無について検討しました。また、new EPOC試験ではレジメンの自由度が高く、FOLFOX4が約67%、CapeOXが約20%、FOLFIRIが約10%に選択されました。
術前化学療法は両群ともに約75%、術後化学療法は約半数の症例で完遂され、完遂率は両群間に大きな差はありません。また、奏効率、手術が行われた症例は両群に差はありませんでした。しかし、主要評価項目のPFSは化学療法単独群20.5ヵ月、Cetuximab併用群14.1ヵ月とCetuximab併用群が有意に低値であり (HR=1.49, p=0.030)、OSはimmatureだったものの、やはりCetuximab併用群が低い傾向にありました (HR=1.48, p=0.163)。
以上のことから、化学療法 + Cetuximabは切除可能または切除可能境界の肝転移症例に対する術前術後補助化学療法の候補にならないと結論されています。ただし、KRAS exon 2野生型の絞り込みのみでは不十分だったことに言及し、現実には化学療法 + Cetuximabにより効果が得られる症例も存在することから、そのような症例を選択できる方法を見出すべきであると締めくくっています。
室:それでは、寺島先生から解説をお願いします。
寺島:結果としては完全にnegativeな試験だと思いますが、いろいろ解釈もあると思います。周術期化学療法に関しては、術後の部分も含めて未だ明確でないところがあり、それが今回の結果につながっていると推察されます。現在、JCOGでもBev併用による同様の試験も進行中なので、その結果をみないと術前補助化学療法の意義はわかりませんが、当面、Cetuximabを周術期に使うことは少ないでしょう。