現地座談会

胃癌に関する注目演題

#LBA4002:SAMIT試験
胃癌の術後補助化学療法としての経口フッ化ピリミジン製剤単剤に対する逐次療法の優越性、およびS-1に対するUFTの非劣性の検証

室:次はSAMIT試験です。岩本先生お願いします。

岩本:胃癌の術後補助化学療法において、経口フッ化ピリミジン製剤単剤 (UFT、S-1) に対するPaclitaxel (PTX) →経口フッ化ピリミジン製剤逐次療法の優越性、およびS-1に対するUFTの非劣性を検証するための2×2デザインによる無作為化第III試験です (図19)。組み入れ基準はcT3/4、N0-2の切除可能胃癌で、R0/1切除がなされた症例です。

 その結果、grade 3/4の有害事象について、S-1が投与された群では消化器毒性が多く、PTX→S-1群では好中球減少も多く認められました。主要評価項目のDFS (disease-free survival) については、まず単独療法群 (UFT 単独群 + S-1単独群) と逐次療法群 (PTX→UFT群 + PTX→S-1群) の比較では、3年DFSは単独療法群54.0%、逐次療法群57.2%であり、有意差はありませんでした (HR=0.92, p=0.273) (図20)。一方、UFT群 (UFT単独群 + PTX→UFT群) とS-1群 (S-1単独群 + PTX→S-1群) の比較では、3年DFSはUFT群53.0%、S-1群58.2%で、UFTの非劣性は示されず (HR=1.23, 95% CI: 1.07-1.43, p=0.151)、S-1群の優位性が認められました (HR=0.81, p=0.0057) (図21)。またOSも同様の結果でした。

室:監修の大村先生、いかがでしょうか。

大村:UFTとS-1は、ともにDPD阻害作用を有するウラシルまたはギメラシルを配合した抗癌剤です。DPD阻害作用はギメラシルの方が強く、またS-1には消化管毒性を抑制するオテラシルが配合されており、世代が新しい経口フッ化ピリミジン製剤に軍配が上がった形です。また、Paclitaxelについては腹膜転移に対する有用性が報告されており、逐次療法の有用性が示されるかと期待しましたが、まったく差がありませんでした。残念な結果です。

室:SAMIT試験の共同演者でもある坂本先生、コメントをお願いします。

坂本:この試験は、国内の大規模ながんセンター系列は参加しておらず、地方の病院を中心に1495例を集積したことが特徴であり、日本における標準的な実地臨床を反映している試験と言えます。Community practiceでは2剤併用の術後補助化学療法は難しいため、このような逐次療法の試験が行われました。

佐藤 (温):この試験を実施してみて、術後補助化学療法におけるS-1 + Docetaxelの可能性についてどう思われますか。

坂本:現在、START-2試験が進行中ですが、個人的にDocetaxelは少し重い印象があります。したがって、SAMIT試験ではweekly Paclitaxelを使い、S-1は4週投与2週休薬ではなく2週投与1週休薬にしています。

室:この試験ではS-1に対するUFTの非劣性が認められなかったと言うのが正しいですか。

坂本:そうです。優越性を検証するようなデザインにはなっていないので、S-1が優越性を示したのではなく、UFTがS-1に対して非劣性を示せなかった試験です。

小松:2004年にweekly Paclitaxelが標準治療に近かったのですか。

坂本:欧米ではほとんど標準治療になっていました。肺癌以外はweekly投与でないと副作用が強いですから。

Lessons from #LBA4002
  • 胃癌の術後補助化学療法における、S-1に対するUFTの非劣性は証明されなかった。
  • 経口フッ化ピリミジン製剤 (S-1、UFT) の導入療法としてweekly Paclitaxelを投与する意義は示されなかった。

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