現地座談会

膵癌に関する注目演題

#4008:JASPAC-01試験
治癒切除後膵癌に対する術後補助化学療法としてのGemcitabine vs. S-1

室:最後はJASPAC-01試験です。坂東先生お願いします。

坂東:治癒切除された膵癌患者を対象に、Gemcitabine (GEM) とS-1群に無作為割り付けした試験です。2012年8月に中間解析が行われたところ、独立評価委員会から試験の有効中止が勧告され、今年のGastrointestinal Cancers Symposiumで報告されました。

 主要評価項目のOSは、2年OS率がS-1群70%、GEM群53%であり、S-1群が有意に優れていました (HR=0.54, 非劣性検定、優越性検定ともにp<0.0001) (図22)。また、RFS (relapse-free survival) も、S-1群が優れていました [HR=0.57, p<0.0001 (優越性検定)] (図23)。有害事象はGEM群で血液毒性、S-1群で消化器毒性が多くみられました。また、今回追加報告されたサブグループ解析では、T1/2、stage Iを除く全てのサブグループにおいて、OS、RFSともにS-1群で良好であり、QOLの調査結果もS-1群のほうが良好でした。以上のことから、治癒切除された膵癌の術後補助化学療法はS-1が標準治療になり得るという結論になっています。

室:報告を受けて寺島先生お願いします。

寺島:進行再発膵癌を対象としたGEST試験では、S-1とGEMのOSのKaplan-Meier曲線がほぼ重なっていました。今回の対象は術後補助化学療法でしたが、これほどの有意差が認められた理由について、まだ明確な答えがありません。膵癌はDPD発現率が高いため、S-1の薬剤特性であるDPD阻害が微小転移に効いているのではないかと推察できます。ただし、S-1がAsian drugと捉えられていて、会場の雰囲気が盛り上がらないのが残念でした。米国でもこの薬をきちんと検証してもらえるようアピールできるといいですね。

谷口:バイオマーカーについては、hENT1 (human equilibrative nucleoside transporter 1) がGEMの効果予測因子となるという報告 (#4006) もあったので、それも含めてバイオマーカー解析を進めてほしいと思っています。

Lessons from #4008
  • 切除後の膵癌患者に対する術後補助化学療法において、OS、RFSともにS-1がGEMより優れていた。
  • S-1は切除後の膵癌患者に対する新しい標準治療となり得ると考えられる。

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