Presentation
切除不能進行・再発大腸癌の1st-line戦略 ―欧州の現状に基づいて―
Claus-Henning Köhne, MD, PhD
STEP戦略とESMOガイドラインのグループ分類
切除不能進行・再発大腸癌の治療においては、STEP戦略が役立ちます (図1)。
STEPの「S」は「Strategy (戦略)」です。治癒を目的とした治療戦略と、緩和を目的とした治療戦略のどちらを行うのか、事前に決定しておくことが、患者さんにとっても重要です。強力な治療は毒性も強いかもしれませんが、治癒を目指す上で必要な治療であると患者さんに理解してもらうことができるからです。
「T」は「Tumor biology (腫瘍生物学)」です。急速に進行するaggressiveな腫瘍か、ゆっくりと進行するindolentな腫瘍かを見分けます。初診時に推測するのは簡単ではありませんが、臨床経過からヒントを得られることもあります。例えば、過去数ヵ月間で急激に悪化して体重減少や疼痛が起こったか、大腸癌であると誰も気づかないくらい元気で運動も自由にできるか。これらは腫瘍の性質を推測するのに十分な情報といえるでしょう。
「E」は「EGFR dependency (EGFR依存性)」で、抗EGFR抗体薬の選択に際してはKRAS 遺伝子が野生型か変異型かを知る必要があります。
「P」は「Patient (患者)」で、治療に対する患者さんのニーズも重要になります。例えば、患者さんが毒性の強い治療を進んで受けようとしているのか、神経障害や脱毛を前向きに受け入れようとしているのか。これらを検討する必要があります。
ESMOガイドラインでは、大腸癌患者をグループ分類しています (表1、図2)。
グループ0は、R0切除可能な肝転移および/または肺転移を有する進行・再発大腸癌です。このグループは、すぐに手術することも可能ですし、術前補助化学療法も視野に入ります。進行再発大腸癌の中では特殊なグループといえるでしょう。
グループ1は、潜在的に切除可能な転移を有する症例で、治癒を目的とした治療戦略の対象です。
グループ2は、切除不能な多発転移を有し、進行が速い、腫瘍による症状があるなどの特徴を持つaggressiveなタイプです。数ヵ月間で体重が減少し、全身状態も悪化しているような症例にも積極的な化学療法が必要です。ただし、グループ2の症例は、私のクリニックではそれほど多くありません。
グループ3は、切除不能な多発転移を有するが、無症状であるか、急速に悪化するリスクがないindolentなタイプです。私のクリニックで最も多くみられますが、積極的な化学療法ではQOLが低下する可能性もあるので、比較的弱めの治療が行われることが多いです。