Presentation
切除不能進行・再発大腸癌の1st-line戦略 ―欧州の現状に基づいて―
Claus-Henning Köhne, MD, PhD
グループ1の治療戦略: 奏効率とR0切除
グループ1は、潜在的に切除可能な転移を有する症例であり、治癒を目的とした治療戦略が必要になるため、奏効率の高いレジメンが選択されます。なぜなら、奏効率とR0切除率は相関するからです6)。さらに患者選択や、多くの専門家による集学的治療も重要になります。
化学療法ではXELOXは1つの選択肢にはなりますが、メタ解析においてFOLFOXがXELOXに比べ奏効率、PFS、OSで優れた成績を示したため7)、私はFOLFOXを選択します。Bevacizumabの併用も議論されますが、NO16966試験ではFOLFOXあるいはXELOXへのBevacizumab併用による奏効率の上乗せは認められませんでした8)。出血や創傷治癒遅延といった合併症の可能性を考慮すると、Bevacizumab併用に足るエビデンスはありません。
一方、抗EGFR抗体薬は優れた奏効率を示しています。CELIM試験では、肝限局転移を有する症例に対し、FOLFOXまたはFOLFIRIにCetuximabを併用することで、KRAS 野生型症例では70%の奏効率が得られました9)。また、CRYSTAL試験のサブグループ解析においては、KRAS 野生型のFOLFIRI + Cetuximab群の奏効率は71%と極めて良好でした(表3) 10)。
なお、R0切除率はCELIM試験33%、CRYSTAL試験13.2%でした。CELIM試験のR0切除率の高さは、集学的チームによって事前に治療戦略に関する話し合いが行われたためと考えられます。CRYSTAL試験では緩和目的で治療を行い、良好な奏効がみられた場合のみ、外科医に手術を依頼しました。このことからも、集学的治療および治療戦略の事前決定の重要性がわかると思います。
治癒を目指す治療戦略において、抗EGFR抗体薬を選択する根拠は3点あります。まず、高い奏効率が得られるという「Quantitative=量」、大幅な腫瘍縮小が得られるという「Qualitative=質」、そして「early=迅速さ」です。CRYSTAL試験の追加解析では、8週時点における20%以上の腫瘍縮小は、FOLFIRI単独群45%に対してFOLFIRI + Cetuximab群で64%と、Cetuximab併用による早期腫瘍縮小効果が認められました11)。
グループ2の治療戦略: FOLFOX/FOLFIRIおよび抗EGFR抗体薬の有用性
グループ2はaggressiveな腫瘍を有するため、積極的な化学療法により疾患をコントロールして症状を軽減し、腫瘍量を減らすことが重要となります。疾患をコントロールする機会は1度だけのケースがほとんどであり、1st-line治療で失敗すれば、2nd-line治療を施行できない状態まで悪化してしまうかもしれません。したがって、ここでも奏効率が指標になると考えます。
このグループでは、余命の短いPS 2の患者さんに対して、QOLを低下させてまでFOLFOXやFOLFIRIを施行する意義があるか議論されます。私たちが実施したレトロスペクティブ解析では、PS 2の症例においても、L-OHPまたはCPT-11と5-FU/LVの併用レジメンを行うことで、OSの延長が認められました(HR=0.79, p=0.04) 12)。PS 0/1の症例でもOSの改善が認められましたが(HR=0.89, p=0.003)、改善率はPS 2の症例ほど高くありませんでした。
さらに、抗EGFR抗体薬の併用も検討に値します。CRYSTAL試験のサブグループ解析では、グループ2に相当する有症状の患者群において、抗EGFR抗体薬の併用による奏効率の上乗せが認められたほか、腫瘍縮小とともに早期の症状緩和も得られました11)。
一方、Bevacizumabでは高い奏効率は得られないことが報告されているため8)、グループ2の症例には使用されません。Bevacizumabは忍容性に優れた薬剤ですが、ここで求められるのは迅速で大幅かつ早期の腫瘍縮小効果であるからです。