消化器癌治療の広場

2011年 米国臨床腫瘍学会年次集会 特別企画座談会 Uniformed or Personalized? 
大腸癌の病態に応じたアプローチを考える

Presentation
切除不能進行・再発大腸癌の1st-line戦略 ―欧州の現状に基づいて―
Claus-Henning Köhne, MD, PhD
1st-lineにおけるVEGF阻害薬および抗EGFR抗体薬のエビデンス

 グループ3の治療戦略について話を進める前に、1st-lineにおけるVEGF阻害薬および抗EGFR抗体薬のエビデンスについて見ていきます。

1. VEGF阻害薬:1st-lineにおける治療効果
 まず、1st-line治療におけるBevacizumabのエビデンスです (表4)。
 IFL に Bevacizumabを併用することでOSが有意に延長しましたが (p<0.001)13)、Capecitabineとの併用ではOSのベネフィットは得られませんでした (p=0.2)14)。これは強力な化学療法を行わなかったことが原因である可能性があります。私はかつてCapecitabine ± Bevacizumabに否定的でしたが、現在では、強力な化学療法を施行できない患者さんの1st-line治療として、忍容性が高く価値があると考えます。
 一方、FOLFOX/XELOX ± Bevacizumabの4群比較されたNO16966試験では、OS曲線はXELOX単独群のみが他の3群に比べて不良でした8)。XELOXにBevacizumabを併用することでOS中央値は2.2ヵ月延長し (19.2ヵ月 vs. 21.4ヵ月, HR=0.84)、FOLFOXの治療効果に近づけることができたわけですが、FOLFOXへのBevacizumabの併用によるOSの改善は0.9ヵ月でした (20.3ヵ月 vs. 21.2ヵ月, HR=0.94)。
 以上、1st-line治療におけるBevacizumab併用によるOSのベネフィットが本当にあるのかは、現時点では確かではありません。また、FOLFIRI + Bevacizumabに関する大規模試験のデータはなく、NO16966試験も個人的にはnegativeであると考えています。したがって、1st-lineでBevacizumab併用化学療法を行うエビデンスはなく、私がNCCNガイドラインを理解できない理由はここにあります。

2. VEGF阻害薬: 2nd-lineにおける治療効果
 一方で、2nd-line治療におけるBevacizumabには素晴らしいデータがあります(表5)。1st-lineでIFLを行った症例に対し、2nd-lineでFOLFOX ± Bevacizumabを投与したE3200試験では、Bevacizumab併用によりOSは1.9ヵ月延長しました (HR=0.75, p=0.0011) 15)。そしてTML試験では2nd-lineでBBPを行うことで、OSが1.4ヵ月延長しました (HR=0.81, p=0.0062) 1)。ただし、TML試験はBBPの有用性を謳った他の観察研究と比較するとOSの差は少なく16, 17)、1st-line開始3ヵ月以内にPDとなった症例と、1st-line後に切除可能となった症例は除外されていることを考慮する必要があります。また、VEGF TrapであるAfliberceptも2nd-lineにおいて、FOLFIRIに併用することで1.4ヵ月のOS延長を認めています (HR=0.82, p=0.003) 2)
 以上、Bevacizumabの前投与のないE3200試験、BBPを行ったTML試験、Afliberceptを投与したVELOUR試験のうち、最も大きなベネフィットが得られたのはE3200試験、つまり1st-line治療においてBevacizumabを投与されていない症例でした。また、VELOUR試験においてBevacizumab前投与の有無を解析した結果、Bevacizumab前投与なし群のOSの差は1.5ヵ月と良好でした2)。つまり、最大のベネフィットが得られるのは、1st-lineでBevacizumabを投与しなかった症例に、2nd-lineでBevacizumabを投与するケースであると考えられます。

3. 抗EGFR抗体薬: 1st-lineにおける治療効果
 続いて、1st-lineにおける抗EGFR抗体薬のエビデンスを見ていきます(表6)。
 抗EGFR抗体薬を用いた5つの臨床試験のうち、3つの試験はFOLFOXおよびFOLFIRIとの併用で、いずれもKRAS 野生型症例において奏効率の改善、PFSおよびOSの延長を認めています18-20)。特にFOLFIRIとの併用を検討したCRYSTAL試験ではOSの有意な延長が示されました18)。FOLFOXとの併用を検討したPRIME試験やOPUS 試験ではOSの統計学的有意差は認められませんでしたが19,20)、OSの差は4.2〜4.3ヵ月と、CRYSTAL試験 (3.5ヵ月) と同等であることから、これらの統合解析により、抗EGFR抗体薬併用によるOSのベネフィットは示されると考えます。一方、XELOXやbolus 5-FUレジメンであるFLOXとの併用では、上乗せ効果は示されませんでした21, 22)。Capecitabineと抗EGFR抗体薬は相性がよくないのかもしれません。
 また、CRYSTAL試験とOPUS試験では、非肝限局転移の症例を対象にサブグループ解析を行いましたが、こうしたグループ3の症例においても抗EGFR抗体薬によるOSの延長効果が確認できました23)

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