Presentation
切除不能進行・再発大腸癌の1st-line戦略 ―欧州の現状に基づいて―
Claus-Henning Köhne, MD, PhD
グループ3の治療戦略: FOLFOX/FOLFIRIおよび抗EGFR抗体薬の有用性
グループ3は、急速に悪化するリスクがないindolentなタイプです。比較的弱めの治療が選択されますが、KRAS 野生型症例においてはCRYSTAL試験20) とPRIME試験21) の結果から、抗EGFR抗体薬の投与を考慮します。しかし、当然ながら患者さんがこの治療を受け入れるかどうか、よく話し合う必要があります。
また、KRAS 変異型症例では、Bevacizumabの使用に関する適切なデータはありませんが、他に適切な選択肢がないため、Capecitabine + Bevacizumabあるいは5-FU/LV + Bevacizumabを検討してもよいと考えます。
リスク分類別にみた抗EGFR抗体薬の投与対象
私たちは2002年、5-FU投与症例を対象に、PS、白血球数、癌細胞数、アルカリホスファターゼ (ALP) 値などのパラメータを用いたリスク分類による予測モデルを発表しました (図3) 24)。このモデルを用いてCRYSTAL試験とOPUS試験のサブグループ解析を行ったところ、OS中央値は中リスク群で16.4ヵ月 vs. 22.2ヵ月、高リスク群で12.6ヵ月 vs. 17.7ヵ月と、中〜高リスク群はCetuximabの使用によるOSの延長が大きいことがわかりました25)。なお、低リスク群でもOSの延長を認めましたが、その程度はわずかでした (25.7ヵ月 vs. 27.0ヵ月)。
また、各レジメンのOS中央値についてリスク分類別を比較しました (表7)。その結果、5-FU単独投与の時代は高リスク群6.1ヵ月、中リスク群10.7ヵ月、低リスク群15.0ヵ月でしたが、多剤併用療法の時代になるとOSは延長し、特に高リスク群では5-FU単剤に比べて約3倍に延長しました。つまり、「現在の高リスク群のOSは、約20年前の低リスク群よりも延長した」といえます。
したがって、中〜高リスクのKRAS 野生型症例は、1st-line治療における抗EGFR抗体薬の対象になると考えられます。また、低リスク群 (PSが良好で、転移が1ヵ所のみの症例) の肝限局転移症例においても、治癒を目指して抗EGFR抗体薬を使用する対象になると考えます。
分子標的薬を使用するタイミング
これまでのデータに基づき、分子標的薬を使用する順序について提案したいと思います。まず、KRAS 野生型には抗EGFR抗体薬が1st-lineとして位置づけられます (表8)。OSの延長が得られること、切除可能となる可能性があること、早期の症状緩和が得られることがその理由です。私の考えでは1st-line でのBevacizumabはKRAS 野生型、変異型のいずれにおいてもOS、PFSのベネフィットは示されていませんが、KRAS 変異型でinfusional 5-FUレジメンまたはCapecitabineの使用を検討しているなら、併用療法としてBevacizumabは最適な選択肢になるでしょう。
VEGF阻害薬は、KRAS 変異の有無に関わりなく2nd-lineに位置づけられると考えます。特にBevacizumabによる1st-lineを受けていない患者さんにおいて、優れた効果が得られるでしょう。Regorafenibは複数の薬剤の治療を受けてきた患者さんの3rd-lineにおいて最良の選択肢です。