吉野: ありがとうございました。Köhne先生にはESMOガイドラインのグループ分類について解説していただきましたが、各グループの患者数の割合を教えていただけますか。
Köhne: 一般的にはグループ3が60%、グループ2が20%、グループ1が20%くらいだと思いますが、施設によって異なります。積極的な肝臓外科医がいて、肝切除を重視している場合はグループ1の割合が多いはずです。
室: 私の病院ではグループ3が約70%を占め、グループ2は20%程度、グループ1は10%程度です。
吉野: ESMOガイドラインの推奨治療についてはいかがですか。
Köhne: 各グループの1st-lineの推奨治療と推奨レベルについては、分子標的薬の併用に関して幅広い議論が行われましたが、委員会のメンバー全員の賛同を得ていないことに注意していただきたいです。ここは論文全体で最も議論の余地があるところです。ガイドラインは法律ではないので、ご自身で判断していただければと思います。
吉野: 私が疑問に思ったのは、グループ1ではFOLFOX + PanitumumabとFOLFOX + Cetuximabは同じ推奨レベルですが、グループ2ではFOLFOX + Panitumumabが推奨レベル+++、FOLFOX + Cetuximabは+(+)であることです。
Köhne: 私は、このようにCetuximabとPanitumumabを分けたくありませんでした。Bevacizumabについても反対したのですが、逆にそれを支持する人もいます。表2は妥協案として受け入れることはできますが、欧州のコンセンサスではありません。ただ、その他は適切であると思います。
設楽: グループ2において、腫瘍関連症状を有する場合はPSが悪く、PS 2以上のときもあります。私はこうした症例には抗EGFR抗体薬を優先して使っていますが、PRIME試験のレトロスペクティブ解析によると、PS 2の症例ではPanitumumabの効果が低いことが示唆されました26)。
Köhne: 患者さんをPS 2と診断した場合、その原因が癌なのか、合併症なのかを確認しなければなりません。さらに、患者さんが車椅子に座っている場合、就床は日中の50%以下なのでPS 2と診断する先生もいるかもしれませんが、実際は一日中就床していることもあります。単純な例ですが、PSが常に疾患状態を反映しているのか、私もわからないときがあります。したがって、個々の患者さんの状態をしっかりと見極めることが大切です。その結果、抗EGFR抗体薬を必要とする患者さんに投与できると考えます。
山ア: グループ2では、急速に増悪する症例をどのように見分ければいいでしょうか。
Köhne: 難しい問題ですので、1つの例をお示ししましょう。切除不能進行・再発大腸癌の44歳男性です。4ヵ月前までは健康でしたが、PS 2で体重が減少し、肝臓は腫大しています。LDHが高く、白血球数は12,000/dLで、先程ご紹介した予測モデルでは高リスク群に分類され、5-FU単独療法では余命6ヵ月になります24)。
FOLFIRI + Cetuximabにより、良好なレスポンスを得てPS 0になりましたが、肝転移巣は切除不能のままでした。FOLFIRI→FOLFOXによる奏効率は15%との報告があることから27)、FOLFOX + Cetuximabに変更した結果、原発巣は病理学的完全奏効 (pCR) となり、肝転移巣は切除可能になりました。2006年5月に治療を開始し、2012年9月現在も存命中です。これは1例に過ぎませんが、この患者さんは若年であり、疾患がコントロールできれば予後を改善できると確信しました。