AfliberceptとRegorafenibの臨床試験
切除不能進行・再発大腸癌治療において、日本ではAfliberceptとRegorafenibは現時点で未承認です (表9)。
Afliberceptは、ヒトVEGF受容体1および受容体2の細胞外ドメインとヒトIgGのFcドメインとの融合蛋白であり、VEGF-AおよびBを阻害します。L-OHPベースレジメンでPDとなった症例を対象にしたFOLFIRI AfliberceptのVELOUR試験2) の結果に基づき、米国FDAは2012年8月にAfliberceptを承認しました。日本では、同様の対象におけるFOLFIRI + Afliberceptの第Ib相試験が終了し、推奨用量を海外と同様の4mg/kgと推定しました。
一方、Regorafenib はさまざまなシグナル伝達経路を抑える経口マルチキナーゼ阻害薬です。標準治療でPDとなった症例を対象としたCORRECT試験において、Regorafenib 群はプラセボ群に比べてPFS とOSを有意に延長しました3)。この試験には日本から100例登録されていたこともあり、日本においてRegorafenibは現在申請中で、2013年に承認される予定です。
日本における分子標的薬の使用状況
日本における臨床での治療選択の傾向をみるために、市場調査のデータを参考にしたいと思います。Bevacizumabと抗EGFR抗体薬の売上は年々増加しており、抗EGFR抗体薬ではPanitumumabの売上がCetuximabを上回るようになっています。これは、Panitumumabが Cetuximabと同様にすべての治療ラインで使用できることに加え、投与が2週間ごとであることも理由であると考えられます。また、infusion reactionの発現率がCetuximabに比べて低いことも知られています。
日本では、1st-lineにおいてFOLFOXが選択される傾向にあります。これは、FOLFIRIのCPT-11による非血液毒性(悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、脱毛など)を避ける傾向にあるためです。また、1st-lineでは抗EGFR抗体薬よりBevacizumabが多く使用されますが、これは抗EGFR抗体薬がすべての治療ラインで使用できることに加え、副作用が考慮されている可能性もあります。なお、Panitumumabは、承認直後では3rd-lineの使用が約70%でしたが、最近では1st-line/2nd-lineでの使用が50%以上に増えています。
現在、1st-line としてのFOLFOXまたはFOLFIRI併用におけるBevacizumabと抗EGFR抗体薬を比較する3つの試験 (CALGB80405試験28)、FIRE-3試験29)、PEAK試験30)) が進行中であり、これらの結果が今後臨床に影響を及ぼす可能性があります。