KRAS 野生型症例の1st-line治療における臨床試験:奏効率に着目する
NCCNガイドライン (ver1. 2013) ではKRAS 野生型の1st-lineとして、L-OHPベーレジメンとCPT-11ベースレジメンのいずれも、Bevacizumabまたは抗EGFR抗体薬の併用が推奨されています4)。
これまでのKRAS 野生型におけるBevacizumabと抗EGFR抗体薬の試験結果より、OSは同等でしたが、PFSはBevacizumabのほうが優る傾向がみられます。一方、奏効率は抗EGFR抗体薬のほうが優れており、KRAS 野生型症例では60%超、肝限局転移症例では70%超であり(図4)、R0切除率も上回る傾向がみられます。
肝限局転移患者における分子標的薬の臨床試験:conversion therapyを目指して
さらに、肝限局転移を有する症例では、抗EGFR抗体薬のCELIM試験およびBevacizumabのBOXER試験においてR0切除率が20〜30%台と高くなっています。
CELIM試験は、切除不能な肝転移を有する症例を対象に、FOLFOX6 + Cetuximab群とFOLFIRI + Cetuximab群を比較した試験です。2011年のESMOで報告されたサブグループ解析によると、PFSとOSいずれもR0非切除群に比べてR0切除群で有意な延長がみられました31)。一方、BOXER試験では、切除不能の肝限局転移を有する高リスク症例を対象にXELOX + Bevacizumabを投与したところ、30例中12例 (40%) が切除可能となりました(図5) 32)。また、1年PFSは50%、1年OSは86%であり、CELIM試験のFOLFOX6 + Cetuximab群と同等でした。なお、Bevacizumab併用レジメンを行った肝転移を有する大腸癌患者では、CTでの形態学的変化が病理学的奏効およびOSに有意な相関を示したことが報告されています33)。さらにKlingerらの報告では、2つの前向き非無作為化試験で切除された肝転移巣を解析した結果、Bevacizumabは化学療法によるpCR率を改善し、それによってPFSおよびOSも有意に延長しました34)。
つまり、conversion therapyにおいて、抗EGFR抗体薬では高いR0切除率が認められ、Bevacizumabでは高いpCR率がみられました。現在、Bevacizumabと抗EGFR抗体薬を直接比較するいくつかの試験が進行中であり、KRAS 野生型の1st-line治療については未だ議論を要します。