消化器癌治療の広場

切除不能進行・再発大腸癌の治療アプローチ: Aggressive or non-aggressive -患者の臨床的因子に基づいた治療選択-

Case discussion

1-1 Aggressive approach

化学療法の選択と抗EGFR抗体薬2剤の違い

室: 最初の論点ですが、化学療法の選択についてはいかがでしょうか。

山ア: FOLFIRI + 抗EGFR抗体薬という選択肢もあったと思うのですが、FOLFOX + Panitumumabを選択された理由は何ですか。

設楽: CELIM試験ではFOLFOX + Cetuximab群とFOLFIRI + Cetuximab群の奏効率がほぼ同等でしたが13)、その他の抗EGFR抗体薬の試験の多くは、相対的にFOLFIRIよりもFOLFOX との併用のほうが高い奏効率が得られていることが、FOLFOXを選んだ理由です。また、肝毒性も理由の1つです。CASE 1のような症例は切除前の化学療法の期間が限定されているので、Oxaliplatin (L-OHP) ベースのレジメンと抗EGFR抗体薬をよく使っています。

Sobrero: FOLFOXについては同感ですね。それに、Panitumumabを併用されたのも正しい選択だったと思います。FOLFOX ± Panitumumab を検討したPRIME試験では、Panitumumab 併用によるPFSと奏効率の有意な上乗せ効果が示されています14)。しかし、L-OHPベースの化学療法とCetuximabの併用に関しては、COIN試験NORDIC VII試験N0147試験の3つの試験で否定されました15-17) (表1)。エビデンスを重視するなら、FOLFOXと併用すべきはCetuximabではなくPanitumumabです。

設楽: Sobrero先生は抗EGFR抗体薬と併用する際、FOLFOXとFOLFIRIのどちらをよく使われますか。

Sobrero: L-OHPベースの方が多いですね。以前はXELOX + Cetuximabをよく使っていましたが、NORDIC VII試験以後はFOLFIRI + Cetuximabに、PRIME試験以後はFOLFOX / XELOX + Panitumumabに切り替えました。

吉野: COIN試験ではXELOX + Cetuximab群で手足症候群の発現頻度が高かったため15)、XELOXと抗EGFR抗体薬の併用は適切ではないと思うのですが、実際にPanitumumabと併用されてどうですか。

Sobrero: 私が今まで経験した限りでは、XELOXとPanitumumabの併用に特に問題はないと思います。COIN試験では下痢も問題になりましたね。XELOX + Cetuximab群のgrade 3/4の下痢の発現頻度は26%と、FOLFOX + Cetuximab群に比べて有意に増加しました15)。下痢がCapecitabineの用量制限毒性であったことから、プロトコールが変更されCapecitabineが減量されましたが、私はこの解釈には疑問で、むしろL-OHPのほうが強く影響したのではないかと考えています。そもそもCOIN試験でCetuximabの有意な上乗せを認めたのは、KRAS 野生型で5-FU投与を受けた肝限局転移の患者だけです。N0147試験NORDIC VII試験の結果も踏まえると、やはりフッ化ピリミジン系薬剤の形態の違いが治療効果の減弱 (detrimental effect) を引き起こす原動力になったとは考えにくい。したがって、Capecitabineと抗EGFR抗体薬の併用については検討の余地があると思います。

室: なるほど。Sobrero先生が抗EGFR抗体薬2剤の違いをどう捉えておられるか、よくわかりました。では、OPUS試験についてはどう思われますか。

Sobrero: OPUS試験ではFOLFOXに対する Cetuximabの併用によりPFSの有意な延長が認められましたが12)、これは第II相試験で症例数も限られています。COIN試験は1,630例、NORDIC VII試験は566例ですから、比較になりません。

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