再発に対する治療開始後の評価の時期
Sobrero: さて、CASE 3の主治医はFOLFOX + Bevacizumabの投与を開始しました。KRAS 検査は行っておらず、この患者さんのKRAS 遺伝子型は不明です。外科の先生にお尋ねしたいのですが、評価はいつ行われますか。
加藤: おそらく2ヵ月後にすると思います。
Sobrero: CASE 3では2ヵ月後の時点で評価がなされず、6ヵ月後に評価が行われました。そこで、ほぼCRという素晴らしい効果がみられたのですが (図9)、残念ながらどの時点で治療効果を得られたのかがわからないという問題があります。
ここで質問です。この症例では、2ヵ月後に評価するのと、6ヵ月後に評価するのとでは違いがあると思いますか?それとも、これまでの臨床経過から手術は難しいでしょうか。
加藤: そうですね、先ほども言ったように自分だったら2ヵ月後に評価しますが、質問の答えとしてはおそらく (2) でしょうか。
Sobrero: なるほど。
設楽: 個人的な意見ですが、最初のCTを見る限り、手術をして長期生存を得るのは難しいように思います。ですから、化学療法を続けながら2ヵ月ごとに評価をしたいと思います。
Sobrero: 設楽先生はそう答えると思っていましたよ。私も同じ意見です。
再発肝転移でほぼCRが得られた後の治療
■2010年8月
Sobrero: 前述の通り、CASE 3ではFOLFOX + Bevacizumabの投与を開始し、6ヵ月後の評価でほぼCRが得られました。L-OHPの間欠投与によるBevacizumabの長期投与を検討したCONcePT試験では、L-OHPベースの化学療法 + Bevacizumabを4ヵ月間行った後にL-OHPを休薬し、4ヵ月に再開しています24)。本症例はすでにCONcePT試験における最初のL-OHPの投与期間を2ヵ月超過していますが、先生方はこの後どうされますか。この時点では神経障害はなく、忍容性は良好でした。
ちなみにイタリアでこの質問をしたときは、(6) を選んだ外科医が何人かいましたが、加藤先生はいかがですか。
加藤: 手術も可能だと思いますが、腫瘍が見えなければ手術はできません。
Sobrero: 「ほぼCR」ということなので、少しは見えると考えてください。
室: 私は (2) の「5-FU/LV + Bevacizumab」を選択します。
山ア: 私も (2) です。
吉野: (6) の「PETでその他の異常がなければ手術する」を選択したいところですが、自分の施設の外科医が無理だと言えば (2) ですね。
Sobrero: なるほど。先生方の考えはよくわかりました。しかし残念ながら、このときの主治医は (1) の「FOLFOX + Bevacizumabの継続投与」を選んだのです。
■2011年2月
Sobrero: FOLFOX + Bevacizumabの投与を続けた結果、2011年2月の最終投与直後に重度の関節痛が発現したため、Bevacizumabの投与を中止。関節痛は消失しました。Bevacizumabと関節痛の関連については、NSABP C-08試験においてgrade 3以上の関節痛が有意に増加したことが報告されています (FOLFOX群: 1.0% vs. FOLFOX + Bevacizumab群: 2.1%, p=0.04) 25)。
この患者さんは再び当院に戻ってきました。CEAは20 ng/mLまで低下しており、L-OHPの総投与量は1,300〜1,400 mg/m2に達していましたが、神経毒性はまだ認めていません。ここで考えられる治療の選択肢は次の7つです。根治を目指す場合は別ですが、この時点ではaggressive approachは必要ではなくなりました。
設楽: レスポンスは維持されているが、Bevacizumabによる関節痛がみられるということですね。Sobrero先生はBevacizumabによる関節痛を経験されたことはありますか。
Sobrero: ええ、あります。ここでおうかがいしたいのは、毒性のためにBevacizumabが使用できなくなった場合、どれが維持療法に適しているかということです。我々は (6) のYttrium-90を選択しました。先生方はYttrium-90を使っておられますか。
室: 日本ではYttrium-90の固形癌に対する適応はありません。
Sobrero: そうでしたか。Yttrium-90は非常に高額な治療で、事前のPET検査で肝臓以外に病変が見つかれば投与はできません。この症例でもPET検査で肺門部分にリンパ節転移が検出されたため、結局、投与不可となりました。その後、この患者さんは受診をやめてしまい、しばらく治療を中断せざるを得ませんでした。