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11月
国立がん研究センター東病院 消化管内科 医長 谷口 浩也

胃癌 食道胃接合部癌

切除不能進行・再発胃癌/食道胃接合部癌の一次治療における標準化学療法に対するPembrolizumab併用化学療法およびPembrolizumab単剤療法を比較した国際共同第III相試験(KEYNOTE-062試験)


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Kohei Shitara, et al.: JAMA Oncol. 6(10): 1571-1580, 2020

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI:immune checkpoint inhibitor)は、胃癌を含めた多くの固形癌において予後の改善をもたらしている。胃癌では、アジアで実施されたATTRACTION-2試験1)(第III相試験)において、三次治療以降におけるプラセボに対するNivolumabの全生存期間(OS)延長効果が示され、本邦でも標準治療の一つとなっている。KEYNOTE-059試験2)(第II相試験)では、PD-L1陽性(CPS[combined positive score]≧1)の進行胃癌に対して三次治療以降のPembrolizumabの効果が示され、同薬剤も米国食品医薬品局(FDA)に迅速承認された。なお、KEYNOTE-061試験3)(第III相試験)では、同じ対象(CPS≧1)で二次治療におけるPembrolizumabの有効性が検証されたが、Paclitaxelに対するPembrolizumabの無増悪生存期間(PFS)およびOSの優越性は統計学的には示されなかった。

 本論文で報告さているKEYNOTE-062試験は、進行胃癌/食道胃接合部癌の一次治療における標準化学療法に対するPembrolizumab上乗せの優越性およびPembrolizumab単剤療法の優越性と非劣性を検証した国際共同第III相試験である。

 主な適格基準は、ECOG PS 0-1、HER2陰性、PD-L1陽性(CPS≧1)、組織学的に腺癌と診断された未治療の切除不能進行・再発胃癌/食道胃接合部癌であり、Pembrolizumab群(P群:Pembrolizumab 200mg、3週毎、35サイクルまで)、Pembrolizumab+化学療法群(P+C群:Pembrolizumab[P群と同様]、CDDP 80mg/m2[day 1]+5-FU 800mg/m2[day 1-5]もしくはCapecitabine 1,000mg/m2 1日2回[day 1-14]、3週毎)、プラセボ+化学療法群(C群)の3群に1:1:1で無作為に割り付けられた。層別化因子は、地域、遠隔転移の有無(局所進行vs. 転移性)、使用されるフッ化ピリミジン(5-FU vs. Capecitabine)であった。

 主要評価項目は、CPS≧1およびCPS≧10のコホートにおけるOSとCPS≧1のコホートにおけるPFSであった。副次評価項目には、CPS≧1のコホートにおける客観的奏効割合(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、忍容性、QOLが含まれた。

 統計設定は、全体のαを片側2.5%として4つの検定(①~④)にそれぞれ割り振られている[①CPS≧1におけるOSの非劣性(P群vs. C群):α=0.004、②CPS≧10におけるOSの優越性(P+C群vs. C群):α=0.0075、③CPS≧1におけるOSの優越性(P+C群vs. C群):α=0.0125、④CPS≧1におけるPFSの優越性(P+C群vs. C群):α=0.001]。さらに、これらが証明された場合にのみ追加の検定(⑤~⑦)が実施できる設定であった。すなわち、①が証明された場合に⑤CPS≧1におけるOSの優越性(P群vs. C群)、②と③が示された場合に⑥CPS≧10におけるOSの優越性(P群vs. C群)、③と④が示された場合に⑦CPS≧1におけるORRの優越性(P+C群vs. C群)が検討できるという設定であった。

 2015年9月18日から2017年5月26日の期間に29ヵ国200施設より計763例の患者が登録され、各治療群に無作為に割り付けされた(P群256例、P+C群257例、C群250例)。全体において年齢の中央値は62歳(範囲:20~87歳)、男性554例(72.6%)、胃癌527例(69.1%)、CPS≧10は281例(36.8%)、MSI-Hは50例(6.6%)であり、各群において患者背景に大きな偏りはなかった。最終解析時におけるフォローアップ期間の中央値(範囲)は29.4(22.0-41.3)ヵ月であった。試験治療終了後の二次治療以降でICIを受けた症例は、それぞれP群4.7%、P+C群4.4%、C群13.5%であった。

Pembrolizumab群(P群)vs. 化学療法群(C群)
 CPS≧1のコホートにおいて、OS中央値はP群10.6ヵ月vs. C群11.1ヵ月(HR=0.91、99.2% CI: 0.69-1.18)であり、ハザード比の信頼区間の上限が事前設定された非劣性マージン1.2を下回り、P群のC群に対するOSの非劣性(①)が示された。ただし、P群のC群に対する優越性(⑤)は示されなかった。PFS中央値はP群2.0ヵ月vs. C群6.4ヵ月(HR=1.66、95% CI: 1.37-2.01)、ORRはP群14.8% vs. C群37.2%、DOR中央値はP群13.7ヵ月vs. C群6.8ヵ月であり、P群ではORRが比較的低いもののDORが長いことが示唆された。

 CPS≧10のコホートにおいて、OS中央値はP群17.4ヵ月vs. C群10.8ヵ月(HR=0.69、95% CI: 0.49-0.97)とP群で良好な結果であった。しかしながら、前述の②、③が示されなかったためC群に対するP群のOSの優越性(⑥)は検定されていない。PFS中央値は、P群2.9ヵ月vs. C群6.1ヵ月(HR=1.10、95% CI: 0.79-1.51)、ORRはP群25.0% vs. C群37.8%、DOR中央値はP+C群19.3ヵ月vs. C群6.8ヵ月であった。

 サブグループ解析において、MSI-Hの症例におけるOSの中央値は、CPS≧1のコホートではP群未到達vs. C群8.5ヵ月(HR=0.29、95% CI: 0.11-0.81)、CPS≧10のコホートではP群未到達vs. C群13.6ヵ月(HR=0.21、95% CI: 0.06-0.83)であった。MSI-HではいずれのコホートにおいてもP群のほうがC群より明らかに優れた治療効果を示しており、その傾向はCPS≧10においてより高かった。Non-MSI-H症例におけるOSの中央値は、CPS≧1のコホートではP群9.5ヵ月vs. C群11.2ヵ月(HR=0.94、95% CI: 0.77-1.14)、CPS≧10のコホートではP群16.0ヵ月vs. C群10.8ヵ月(HR=0.76、95% CI: 0.54-1.09)であり、non-MSI-HでもCPS≧10ではP群のほうが良好な治療効果を示した。

Pembrolizumab+化学療法群(P+C群)vs. 化学療法群(C群)
 CPS≧1のコホートにおいて、OS中央値はP+C群12.5ヵ月vs. C群11.1ヵ月(HR=0.85、95% CI: 0.70-1.03、p=0.05)であり、P群に対するP+C群のOSの優越性(③)は示されなかった。PFS中央値は、P+C群6.9ヵ月vs. C群6.4ヵ月(HR=0.84、95% CI: 0.70-1.02、p=0.04)であり、PFSについてもP+C群の優越性(④)が証明されなかった。ORRは、P+C群48.6% vs. C群37.2%、DOR中央値はP+C群6.8ヵ月vs. C群6.8ヵ月であった。P+C群では、C群と比較しORRが約10%上乗せとなっている(⑦が検証できておらず統計学的な有意差は示せていない)が、DOR、PFS、OSには寄与していないという結果であった。

 CPS≧10のコホートにおいて、OS中央値はP+C群12.3ヵ月vs. C群10.8ヵ月(HR=0.85、95% CI: 0.62-1.17、p=0.16)であり、P+C群の優越性(②)は示されなかった。

有害事象
 P群、P+C群、C群における有害事象の頻度は、全gradeで各々54.3%、94.0%、91.8%、grade 3以上で16.9%、73.2%、69.3%であった(中断を要する有害事象:3.9%、27.6%、18.0%、治療関連死:1.2%、2.0%、1.2%、grade 3以上の免疫関連有害事象:5.9%、5.6%、1.6%)。総じて、P群で有害事象の頻度が低く、C群とP+C群の発現頻度は同等であった。

まとめ
 本試験では、CPS≧1のPD-L1陽性患者に対する一次治療Pembrolizumab療法の化学療法に対するOSの非劣性が示された。また、CPS≧10の患者においては化学療法よりもPembrolizumab療法のほうがOS benefitが高い可能性が示唆された。一方、Pembrolizumab併用化学療法の化学療法に対する優越性については、CPS≧1、CPS≧10のいずれのコホートにおいても示されなかった。


日本語要約原稿作成:国立がん研究センター東病院 消化管内科 久保田 洋平



監訳者コメント:
胃癌に対する新たな一次治療が期待される時代に入ったが、さらなる新規治療開発も重要

 胃癌に対する抗PD-1/PD-L1抗体を1st-lineで検討する複数の臨床試験が実施されてきた。本稿で紹介したKEYNOTE-062試験に加えて、ESMO Virtual Congress 2020では、重要な2つの試験が報告された。CheckMate-649試験4)では、一次化学療法に対するNivolumabの上乗せ効果が検証され、主要評価項目であるCPS≧5の対象におけるPFSおよびOSはいずれもNivolumab併用化学療法群で有意に延長したことが報告された。一方、アジアで実施されたATTRACTION-4試験5)では、Nivolumab併用化学療法群でPFSの有意な改善がみられたが、OSの延長効果は示されなかった。これらの結果からNivolumab併用化学療法は胃癌に対する新たな一次治療になり得ると期待されるが、3つの試験の結果の相違に関する考察や、適切な対象患者の議論が必要であろう。またさらなる予後改善のための新規治療の開発が依然として重要であると考える。

監訳・コメント:国立がん研究センター東病院 消化管内科 設樂 紘平

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