論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

最新の論文紹介一覧へ
2009年1月~2015年12月の論文紹介
2003年1月~2008年12月の論文紹介

6月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長 加藤 健

胃癌 食道胃接合部癌

SPOTLIGHT試験:CLDN18.2陽性、HER2変異陰性の切除不能局所進行もしくは転移のある胃癌・食道胃接合部腺癌に対するZolbetuximab、mFOLFOX6併用療法を検証した国際多施設共同無作為化二重盲検比較第III相試験


Kohei Shitara, et al.: Lancet. 401(10389): 1655-1668, 2023

 Claudin-18 isoform 2(CLDN18.2)は胃粘膜細胞にのみ発現するタイトジャンクションタンパクで胃癌、食道胃接合部癌においてもほとんどその発現が保持されている1,2)。胃癌が悪性化すると細胞極性が失われCLDN18.2が細胞表面に露出してCLDN18.2抗体がよりアクセスしやすくなることが示唆されている2-8)。ZolbetuximabはCLDN18.2を標的としたファーストインクラスのキメラIgG1モノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞障害および補体依存性細胞毒性を介して胃・食道胃接合部腺癌の細胞死を引き起こす2,4-11。第IIb相試験であるFAST試験では、進行胃・食道胃接合部腺癌患者において、Zolbetuximabを1次化学療法と併用した場合、化学療法単独に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を改善することが示唆された4。本試験(SPOTLIGHT試験)は切除不能局所進行または転移のある胃癌・食道胃接合部腺癌の1次治療における標準化学療法(mFOLFOX6)に対するZolbetuximab+mFOLFOX6併用療法の優越性を検証した国際多施設共同無作為化二重盲検比較第III相試験である。

 本試験は20ヵ国、215施設で行われた。患者は地域(アジアまたは非アジア)、転移の臓器数(0-2または3)、胃切除歴の有無を層別化因子としてZolbetuximab+mFOLFOX6(Zolbetuximab群)もしくはプラセボ+mFOLFOX6(プラセボ群)に1:1で無作為に割り付けられた。

 主な適格基準は、18歳以上、ECOG PS 0-1、RECIST ver1.1における評価可能病変を有し、主要臓器機能が保たれたHER2陰性かつCLDN18.2陽性(免疫染色で腫瘍の75%以上が中等度~高度陽性)が判明している未治療の局所進行切除不能または転移のある胃癌・食道胃接合部腺癌である。

 化学療法は1サイクルを42日としてZolbetuximab(初回loading doseとして800mg/m2、その後3週毎に600mg/m2)+mFOLFOX6(2週毎)、またはプラセボとmFOLXOX6を4サイクル実施した。4サイクル以降は病勢進行、毒性発現、他の抗癌剤治療の開始、またはその他の中止基準を満たすまで継続された。治療効果判定はスクリーニング時の後、最初の54週は9週毎、その後は12週毎に画像検査によって評価された。

 主要評価項目はPFSで、主な副次評価項目にはOS、無増悪期間が含まれていた。サンプルサイズはZolbetuximab群とプラセボ群のPFS中央値を9ヵ月vs. 6ヵ月(HR=0.67)と想定し、片側有意水準0.025、10%が脱落すると想定して550例が必要と判断された。

 2018年1月から2022年4月までに、2,735例が検査を受けた。CLDN18.2について評価可能であった38%がCLDN18.2陽性であった。HER2陰性患者でCLDN18.2を評価できた患者のうち、CLDN18.2陽性は42%であった。適格基準を満たした565例が無作為化された(Zolbetuximab群283例、プラセボ群282例)。患者の年齢中央値は61.0歳(IQR: 50.0-69.0)で429例(76%)が胃癌、136例(24%)が食道胃接合部腺癌であった。組織分類を除いて両群間で患者背景は概ね類似していた。PD-L1強発現(CPSスコアが5以上)は13%で認められた。

 観察期間中央値はZolbetuximab群で12.94ヵ月、プラセボ群で12.65ヵ月であった。主要評価項目のPFSについて、Zolbetuximab群ではプラセボ群に比較して病勢進行もしくは死亡リスクの有意な低下を認めた(HR=0.75、95% CI: 0.60-0.94、p=0.0066)。PFS中央値はZolbetuximab群では10.61ヵ月(95% CI: 8.90-12.48)、プラセボ群では8.67ヵ月(95% CI: 8.21-10.28)で有意に延長していた。PFSのサブグループ解析では事前に指定したサブグループ全体においてZolbetuximab群で延長していた。サンプルサイズが小さかったため食道胃接合部腺癌についてはPFSに関する結論は出なかった。

 副次評価項目のOSの追跡期間中央値はZolbetuximab群22.14ヵ月に対し、プラセボ群では20.93ヵ月であった。中間解析の死亡例はZolbetuximab群で283例中149例(53%)、プラセボ群では282例中177例(63%)でありZolbetuximab群で死亡リスクの有意な低下を示した(HR=0.75、95% CI: 0.60-0.94、p=0.0053)。OS中央値はZolbetuximab群では18.23ヵ月(95% CI: 16.43-22.90)、プラセボ群では15.54ヵ月(95% CI: 13.47-16.53)で有意に延長していた。OSについても事前に指定したサブグループ全体で延長していたが食道胃接合部腺癌についてはサンプル数が少なく結論は出なかった。

 中央判定による奏効期間中央値はZolbetuximab群では9.00ヵ月に対し、プラセボ群では8.05ヵ月で、客観的奏効はZolbetuximab群、プラセボ群いずれも48%(95% CI: 42-54)であった。一方で、担当医の判定による客観的奏効割合および奏効期間中央値は、Zolbetuximab群では53%と9.00ヵ月、プラセボ群では44%と6.80ヵ月であった。

 投与期間は、Zolbetuximab群で中央値6.2ヵ月(IQR: 2.5-12.0)、プラセボ群で6.4ヵ月(IQR: 3.7-10.3)であった。後治療はZolbetuximab群、プラセボ群それぞれ48%、53%で受けており治療内容は両群間で類似していた。

 Zolbetuximab群、プラセボ群におけるgrade 3以上の有害事象の頻度はそれぞれ242例(87%)、216例(78%)であった。頻度の高い有害事象は悪心・嘔吐、食思不振であり、Zolbetuximab群ではプラセボ群に比べ10%を超える頻度の多さを認めた。悪心・嘔吐、食思不振は胃切除の有無にかかわらず認められ最初の治療サイクル中に最も多く発生しその後は減少した。

 治療関連の有害事象により、Zolbetuximab群の14%、プラセボ群の2%で治療が中止された。治療関連死はZolbetuximab群5例(2%)、プラセボ群4例(1%)で認めた。両群で新たな有害事象は認められなかった。

 本試験では、CLDN18.2陽性HER2陰性で局所進行切除不能または転移のある胃癌・食道胃接合部腺癌に対するZolbetuximab+mFOLFOX6療法がプラセボ+mFOLFOX6に比較して有意にPFSとOSの延長を認め、新たな1次治療となる可能性が示された。


日本語要約原稿作成:京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 角南 智彦



監訳者コメント:
待望の新薬Zolbetuximabが一次治療に登場!今後の使い分けは?

 2016年のASCOでFAST試験のセンセーショナルな結果が報告されてから早7年。現在、胃癌の世界でも免疫チェックポイント阻害薬旋風が吹き荒れる中、待望の、そして期待されていたZolbetuximabの効果が検証された。CLDN18.2陽性と判断される患者はHER2陰性の約40%を占めるため、多くの患者の福音となるであろう。主要評価項目であるPFSの有意な延長効果、中間解析ではあるがOSの有意な延長効果も示された。しかし、中央判定による奏効割合は両群で同等であり、奏効期間もほぼ変わらなかった。Zolbetuximabは、縮小効果は高くないものの、長期の病勢安定が得られることでPFSの延長を示す薬剤かと思われたが、担当医判定ではZolbetuximab群で高い奏効割合と長い奏効期間が得られていた。この中央判定と担当医判定の乖離は以前からさまざまな臨床試験で指摘されていることである。はたして担当医の判定通りなのか?実地臨床でその効果が実感できるのか期待したいところである。有害事象としては、治療初期に悪心・嘔吐や食思不振などが出現しやすい結果であった。その後は適切な用量調整などにより、頻度は低下していることから、長期に遷延するものではなさそうである。しかし、実臨床ではさまざまな患者に投与されることを考えると、リスクを少しでも減らすために十分な制吐療法や患者への教育を行っていくなどの対策が必要であろう。

 本治療法の欠点として投与間隔の異なる治療法(Zolbetuximabは3週毎投与、mFOLFOX6は2週毎投与)の組み合わせということがある。幸い3週毎投与のCAPOX(Capecitabine+Oxaliplatin)との併用の意義を検証したGLOW試験でも良好な結果が2023年ASCO Plenary Seriesで報告された。多くの症例ではCAPOXとの併用で使用されることが安易に想像されるが、経口摂取が困難な症例や短時間の治療時間を好む症例などにも投与可能である本治療法があるのは頼もしい。

 現在の標準治療であるNivolumab併用療法との使い分けをどうしていくのか?これは直近の重要な課題のひとつである。HER2陰性胃癌の約40%がZolbetuximabの対象となる。しかしCLDN18.2陽性症例の中にCPS≧5症例が13%程度含まれており、Nivolumab併用療法が期待できる症例もいるかもしれない。胃癌におけるCLDN18.2とその他の分子マーカーとの関連性をレトロスペクティヴに検討した結果によると、CLDN18.2陽性は二次治療以降の免疫チェックポイント阻害薬に影響がなかったと報告されている12。現時点では、一次治療でしか使うことができないZolbetuximab併用療法を行うことが優先されると思われるが、使い分けのバイオマーカー探索、さらにはZolbetuximabへの免疫チェックポイント阻害薬の上乗せ効果はあるのか(ILUSTRO: NCT03505320)?など、まだまだ検討していくことが多く注目していきたい。

  • 1) Niimi T, et al.: Mol Cell Biol. 21(21): 7380-7390, 2001 [PubMed]
  • 2) Sahin U, et al.: Clin Cancer Res. 14(23): 7624-7634, 2008 [PubMed]
  • 3) Pellino A, et al.: J Pers Med. 11(11): 1095, 2021 [PubMed]
  • 4) Sahin U, et al.: Ann Oncol. 32(5): 609-619, 2021 [PubMed]
  • 5) Türeci O, et al.: Ann Oncol. 30(9): 1487-1495, 2019 [PubMed]
  • 6) Moran D, et al.: Ann Oncol. 29(suppl_8): viii14-viii57, 2018
  • 7) Rohde C, et al.: Jpn J Clin Oncol. 49(9): 870-876, 2019 [PubMed]
  • 8) Sahin U, et al.: Eur J Cancer. 100: 17-26, 2018 [PubMed]
  • 9) Sawada N: Pathol Int. 63(1): 1-12, 2013 [PubMed]
  • 10) Türeci Ö, et al.: Oncoimmunology. 8(1): e1523096, 2018 [PubMed]
  • 11) Minacht-Kraus R, et al.: Ann Oncol. 28(suppl_5): v126, 2017
  • 12) Kubota Y, et al.: ESMO Open. 8(1):100762, 2022 [PubMed]

監訳・コメント:倉敷中央病院 消化器内科 森脇 俊和

論文紹介 2023年のトップへ

このページのトップへ
MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc
Copyright © MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc. All Rights Reserved

GI cancer-net
消化器癌治療の広場