切除不能大腸癌に対するneoadjuvant approach
Scott Kopetz先生
Kopetz: 私がまずキーポイントとして挙げたいのは、肝切除の重要性です。実際には米国で肝切除術を受ける患者の割合は約3〜4%17) ですが、化学療法と手術の併用により臨床経過を改善することは可能と考えます。
近年、多くの新薬の導入によって切除不能大腸癌患者の5年生存率は向上し、我々MD Anderson Cancer CenterとMayo Clinicが共同で行ったレトロスペクティブな解析18) では、2004〜2006年の時点で約30%に達しています (図5-A)。さらに約20%の患者が肝切除を受けていますが、これは多臓器転移の患者も含まれています。肝切除施行例の生存率は、手術を行わなかった症例に比べて非常に良好です (図5-B)。
一方で化学療法も進歩しており、米国では2004年に抗EGFR抗体薬とBevacizumabが使用可能となりました。我々は、“当初は切除不能でも、治療によって切除にもち込めそうな症例”に注目し、1st-line治療によって高率で切除可能にconversionさせています。なかには2nd-lineあるいは3rd-lineまで行って、conversionに成功したケースもまれにあります。Conversion therapyによって切除可能となった患者の予後も、当初から切除可能であった患者とほぼ同じで良好です19)。肝内に16個もの多発転移を認めた症例でも、術前に抗EGFR抗体薬を3ヵ月間投与して高いレスポンスが得られ、約20%の残存肝を残して切除が行えた症例もあります。
Conversion therapyにおいて、奏効率はR0切除の可否を判断する最良のサロゲートエンドポイントになります。CRYSTAL試験では、FOLFIRIにCetuximabを追加することによる奏効率の上乗せが、R0切除率の向上に結びつくことが確認されています。肝転移のみの症例では、R0切除率がFOLFIRI単独群の4.5%に比べ、FOLFIRI + Cetuximab群で9.8%と約2倍に高まりました13)。
当初から切除可能な患者の場合も、FOLFOX + Bevacizumab (過去にL-OHPを使っていればFOLFIRI + Bevacizumab) を2〜3ヵ月間行ってから手術を行い、さらに術後補助化学療法を行うことを勧めます (表1)。一方、切除不能の場合はFOLFOX / FOLFIRI + Cetuximab / PanitumumabまたはFOLFOXIRI ± Bevacizumab を行い、conversionを目指します。Conversion therapyではレスポンスが重要ですから、SDしか得られない場合は早めにレジメンを切り替え、切除にもち込めるまで治療を続けます。