消化器癌治療の広場

ASCO 2011特別企画座談会 Uniformed or Personalized? 
大腸癌の病態に応じたアプローチを考える

Theme 1  1st-lineにおける病態に応じた分子標的治療のアプローチ

1-1 Aggressive approach―Conversion therapy

術前補助化学療法と術後補助化学療法

瀧内: 掛地先生、Kopetz先生、ありがとうございました。 お二人のご発表にコメントまたは質問はありませんか。

Kopetz: 私は掛地先生のご意見に概ね賛成です。肝切除率についての臨床試験を紹介しておられましたが、確固たる答えを得るには前向きな試験が必要です。我々も第II相試験とnon-comparativeな第III相試験を行っています。

小松: Kopetz先生は、肝切除術後に術後補助化学療法を行っているということですが?

Kopetz先生

Kopetz: はい。データは限られていますが、周術期に化学療法を行った群と行わなかった群を比較したEORTC 40983試験20)といくつかの古いデータに基づくと、6ヵ月間の周術期化学療法を行うことがベストという結論に達します。ただ、化学療法を続けると毒性の問題が出てくるので、conversionを必要としない限りは、術前補助化学療法は3〜4ヵ月以内に留めるようにしています。

吉野: Kopetz先生にお聞きしますが、術後の病理所見で術前補助化学療法のレスポンスがみられなかった場合、術後の化学療法にはどのレジメンを選択されますか。

Kopetz: 鋭い質問ですね、実はいつもそれで苦労しているのです。先生方はgood responseをどのように評価していますか? 大腸癌のレスポンスが生物学的に一様でないことは周知の事実です。例えば、腫瘍が術前補助化学療法の開始時と同じサイズであっても、癌細胞のviabilityが5%まで低下している場合もあれば、腫瘍が縮小していてもviabilityは70%という場合もあるかもしれません。Viabilityは必ずしも最良のマーカーとは限りません。術後の病理所見でレスポンスがみられなかった場合にレジメンを切り替えるべきか否かは、非常に難しい問題です。

吉野: 私は、病理学的レスポンスは得られていないものの癌細胞が減少し、CTである程度の縮小が認められた場合は、術前・術後で同じレジメンを計6ヵ月間行います。例えば、術前補助化学療法を2ヵ月、術後補助化学療法を4ヵ月間という場合もあります。

掛地: 私も吉野先生と同意見です。私の場合は、ほぼ全例に6ヵ月間の術後補助化学療法を行っています。

Conversion therapyに適したベースレジメンと分子標的治療薬は?

瀧内: Conversion therapyのベストなベースレジメンは 何でしょうか。Kopetz先生はFOLFOXとFOLFIRIのどちらを推奨されますか。

Kopetz: 通常はFOLFOXですね。主な理由はレスポンスまでの時間です。細胞毒性抗癌剤の反応速度には微妙な差がみられることがあり、L-OHPはレスポンスまでの時間が速いという印象があります。また、conversionに達するまでにどのぐらいの時間がかかるかわからないので、肝障害に対する懸念もあります。もし切除可能になるまでに6ヵ月間の化学療法を要するとすれば、6ヵ月間のCPT-11ベースのレジメンより、6ヵ月間のL-OHPベースのレジメンを選びます。

掛地: 私も同じような理由で最初にL-OHPベースのレジメンを選ぶので、conversion therapyのレジメンはFOLFOX + BevacizumabまたはFOLFOX + Cetuximabになります。

瀧内: では、吉野先生はconversion therapyにどの分子標的治療薬を選択されますか。

吉野: 奏効率と腫瘍の縮小が得られるまでの速さという点で、おそらく抗EGFR抗体薬がBevacizumabよりも優れているのではないかと思います。

瀧内: NO16966試験ではBevacizumabの併用によって奏効率の上乗せが示されませんでしたが21)、CRYSTAL試験3)やPRIME試験4)ではCetuximab あるいはPanitumumab の併用により奏効率が向上していますので (図6)、抗EGFR抗体薬はconversion therapyにおいて理にかなった選択であると思います。先ほどのCASE 1では、FOLFOX + Panitumumabを6コース投与した結果、良好なレスポンスが得られ、肝切除術を行うことができました (図7)


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