1. 診断のポイント
転移性肝癌は原発性肝癌よりも頻度が高く、原発巣としては肺癌、大腸癌、膵癌が多い 1)。肝転移の画像所見は原発巣の画像所見と類似するため、原発巣によって様々な像を呈するが、乏血性の転移が多い。乏血性転移の典型的な画像所見は、動脈相でのRim状濃染である(図1) 2)。これは腫瘍辺縁部に腫瘍細胞が多く存在し、中心部に壊死や線維化が存在することに起因する。その他、遅延相の中心部濃染(中心部が壊死ではなく線維化主体の場合)、拡散強調像高信号(辺縁主体に拡散強調像高信号が起こることがある)、T2強調像高信号、肝細胞相低信号が特徴である(図2) 2)。また、大腸癌の肝転移ではCTで石灰化を同定できることがある(図3)。MRIでは、淡い石灰化はT1強調像高信号、高度の石灰化はT1強調像・T2強調像ともに低信号を呈するが、CTの方が指摘しやすい。
大腸癌では肝転移が存在する場合でも、原発巣と肝転移を完全に切除できる症例には外科切除が推奨される。そのため、転移の個数や部位、大きさを正確に診断する必要がある。一般的に大腸癌の治療前には原発巣と全身の評価目的に造影CTが施行されるが、造影CTよりもEOB造影MRIの方が肝転移の診断能が高い(造影CT:感度 82.1%、特異度 73.5%、EOB造影MRI:感度 93.1%、特異度 87.3%)とのメタ解析が報告されている 3)。EOBを使用したダイナミックMRIに拡散強調像を組み合わせることで肝転移の検出感度が向上する(拡散強調像単独:感度 87.1%、EOB造影MRI単独:感度 90.6%、拡散強調像+EOB造影MRI:感度 95.5%)こともメタ解析で示されており、特に1 cm未満の小さな病変で恩恵が大きい(拡散強調像単独:感度 68.9%、EOB造影MRI単独:感度 83.0%、拡散強調像+EOB造影MRI:感度 90.9%) 4)。また、大腸癌肝転移が疑われた症例に造影CTに加えてEOB造影MRIを行うことで、29.7%の症例で手術計画が変更されたとの報告もある 5)。以上より、大腸癌治療前はできる限りEOB造影MRIを施行して肝転移の有無を評価すべきと考える。
参考文献
- 1) Horn SR, Stoltzfus KC, Lehrer EJ, et al. Epidemiology of liver metastases. Cancer Epidemiol 2020:67:101760.
- 2) Karaosmanoglu AD, Onur MR, Ozmen MN, et al. Magnetic Resonance Imaging of Liver Metastasis. Semin Ultrasound CT MR 2016;37:533-548.
- 3) Choi SH, Kim SY, Park SH, et al. Diagnostic performance of CT, gadoxetate disodium-enhanced MRI, and PET/CT for the diagnosis of colorectal liver metastasis: Systematic review and meta-analysis. J Magn Reson Imaging 2018;47:1237-1250.
- 4) Vilgrain V, Esvan M, Ronot M, et al. A meta-analysis of diffusion-weighted and gadoxetic acid-enhanced MR imaging for the detection of liver metastases. Eur Radiol 2016;26:4595-4615.
- 5) Sofue K, Tsurusaki M, Murakami T, et al. Does Gadoxetic acid-enhanced 3.0T MRI in addition to 64-detector-row contrast-enhanced CT provide better diagnostic performance and change the therapeutic strategy for the preoperative evaluation of colorectal liver metastases? Eur Radiol 2014;24:2532-2539.
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