L-OHPの併用によりさらなる予後の改善が証明され、次に大きな期待を集めたのが、すでに切除不能大腸癌治療における有効性が認められていた分子標的治療薬の術後補助化学療法への応用である (表6)。しかしながら、Bevacizumab、Cetuximabともに期待された上乗せ効果は示されていない。
NSABP C-08試験36-38)では、stage II/ IIIの結腸癌を対象として、抗VEGF抗体BevacizumabのmFOLFOX6療法に対する上乗せ効果が検討された。追跡期間中央値は35.6ヵ月で、DFSは最終登録終了後15ヵ月の時点ではBevacizumab併用群で有意に良好であったが (P<0.0001) 、徐々に生存曲線が接近し、3年DFSでは有意差は示されなかった (HR=0.89, 95% CI: 0.76-1.04, P=0.15)38)。また、追加解析結果としてOSも報告されたが、Bevacizumabの上乗せ効果は認められなかった (HR=0.96, 95% CI: 0.79-1.15, p=0.64) 55)。
ヨーロッパではFOLFOX/XELOX療法に対するBevacizumabの上乗せ効果を検証するAVANT試験が行われた。NSABP C-08試験同様に、本試験でも主要評価項目である3年DFSにおいて有意差はなく、むしろBevacizumab併用群がFOLFOX単独投与群を下回る結果であった (FOLFOX + BV vs. FOLFOX : HR=1.17 [95%CI: 0.98-1.39], XELOX + BV vs. FOLFOX : HR=1.07 [95%CI: 0.90-1.28]) 56)。さらに、stage IIIの症例に対して年齢 (70歳以上/未満)、性別、人種 (アジア人/白色人種)、T stage (T3/T4/他)、リンパ節検索個数 (12個以上/未満)、N stage (N1/N2) でサブグループ解析が行われたが、いずれの解析結果もstage III全体の結果と同様の傾向を示し、Bevacizumabの上乗せ効果は認めなかった57)。
その他、Capecitabineに対するBevacizumabの上乗せを検討したQUASAR 2試験41)が現在進行中であり、結果が待たれる。
ASCO 2009でのNSABP C-08試験の報告に続き、ASCO 2010ではCetuximabのmFOLFOX6療法に対する上乗せ効果を検討したNCCTG intergroup N0147試験の結果が報告された42, 43)。同試験は、検討予定数の50%の症例に対する中間解析において、Cetuximabの上乗せ効果が認められなかったために中止となった。
追跡期間中央値は23ヵ月で、KRAS野生型患者の3年DFSはmFOLFOX6群で75.8%、Cetuximab併用群では72.3%であり (HR=1.2, 95% CI: 0.96-1.5, P=0.22)、Cetuximabの上乗せ効果は認められなかった。またOSについても同様であった (各々87.8%, 83.9%, HR=1.3, 95% CI: 0.96-1.8, P=0.13) 。特に、70歳以上のCetuximab併用群の3年DFSの低下が顕著であった (各々80.9%, 66.1%, HR=1.79, 95% CI=1.01-3.18, P=0.03) 42)。
術後補助化学療法としてのCetuximabの上乗せ効果を検討する無作為化比較試験としては、この他にstage III結腸癌のKRAS野生型患者1,602例が登録されたPETACC-8試験 (FOLFOX4±Cetuximab) が実施されており、ESMO 2012において最新のデータとサブグループ解析が発表された67)。観察期間中央値はFOLFOX4群3.30年、FOLFOX4+Cetuximab群3.33年であり、主要評価項目であるDFSは、3年DFSがFOLFOX4群78.0%、FOLFOX4+Cetuximab群75.1%と、両群間に差はみられなかった (HR=1.047, 95% CI: 0.853-1.286, p=0.6562) 。3年OSもFOLFOX4群90.5%、FOLFOX4+Cetuximab群88.3%と有意差はなかった (HR=1.092, 95% CI: 0.813-1.466, p=0.5583) 。
また、計画されたサブグループ解析では、KRAS /BRAFともに野生型の症例においても、DFS (p=0.9117) 、OS (p=0.9236) ともにKRAS 野生型症例と同様に両群間に有意差は認められなかった。なお、Cetuximab併用によりDFSのbenefitを得られない症例は、女性、70歳超、右側結腸癌であった。一方、診断時にpT4N2であった症例では、DFSがHR=0.555 (p=0.0122) と、Cetuximab併用によりbenefitが得られると解析された。
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