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第6回 胃癌外科手術の変遷

9. まとめ 今後の展望

 我が国の優れた胃癌治療を支えてきたのは、先人達が開発した系統的リンパ節郭清の概念とその手技である。さらなる胃癌治療成績の向上を目指して拡大手術が開発されてきたが、1990年代以降の臨床試験において拡大手術はその意義を示すことができず、現在の標準治療はD2リンパ節郭清となっている。
 進行胃癌に対しては、局所治療としての外科治療だけでは治療成績が不十分であり、全身疾患と考えた周術期化学療法の必要性が検討されている。術後補助化学療法について、2006年に報告されたACTS-GC試験の結果53)から、胃癌取扱い規約第13版における病期II、IIIA、IIIB症例に対する、術後1年間のS-1投与が推奨されている。また、術前補助化学療法について、現在、その有効性が臨床試験で検討されている。術前補助化学療法では、胃切除後よりも強力な化学療法が施行でき、高い奏功率が期待できるが、化学療法に感受性のない場合には、病期がさらに進行し手術不能となる危険性がある。
 早期胃癌に対しては、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術といった低侵襲手術の導入が進んでいる。低侵襲手術は、周術期の免疫能低下を抑制することで治療成績を向上させる可能性があり、今後は進行癌に対する低侵襲手術の優越性を検証する臨床試験の実施が望まれる。

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