mFOLFOX6:FOLFOX(5-FU/LV+L-OHP)
Yoon HH, et al.: Ann Oncol. 27(12): 2196-2203, 2016 |
FOLFOX療法は、元来切除不能進行・再発大腸癌に対して開発されたレジメンである。しかし、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤という胃癌の1次治療のキードラッグで構成され、静脈注射のみで経口摂取困難な場合でも投与可能であることから、切除不能進行・再発胃癌でも開発が進められた。FOLFOX療法と標準治療の無作為化比較試験の知見はないが、最近の第II/III相比較試験で対照群として用いられるようになり1,2)、2017年3月にわが国でも保険診療で使用可能となった。実臨床では、投与の簡便さや併用時のL-OHPの用量から、mFOLFOX6療法が頻用される。また、mFOLFOX6療法については、70歳以上の高齢者胃癌に対する1次治療3)(第II相試験)や、標準治療不応・不耐後のサルベージライン4)(レトロスペクティブ試験)としての有用性も報告されている。
■有効性
切除不能進行食道癌、食道胃接合部癌、胃癌の初回治療例を対象に、分子標的薬の上乗せを検討した第II相無作為化比較試験1)、第III相無作為化比較試験2)で用いられた対照群としてのmFOLFOX6療法は、生存期間(OS)中央値11.3〜11.5ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値6.7〜6.8ヵ月、奏効割合40.6〜46.4%と報告された1,2)。高齢で初回治療例を対象とした単群第II相試験3)では、OS中央値 10.5ヵ月、PFS中央値 6.8ヵ月、奏効割合34.9%と、若年者と同様の効果が示された。プラチナ系薬剤を含む標準治療不応・不耐後の症例を対象としたレトロスペクティブ試験4)では、OS中央値8.9ヵ月、PFS中央値3.0ヵ月、奏効割合23.1%であり、一部の状態のよい患者にとっては有効な可能性が示唆された。
治療対象 | 初回1,2) | 高齢者初回3) | 標準治療不応・不耐後4) |
PFS | 6.7〜6.8ヵ月 | 6.8ヵ月 | 3.0ヵ月 |
OS | 11.3〜11.5ヵ月 | 10.5ヵ月 | 8.9ヵ月 |
奏効割合 | 40.6〜46.4% | 34.9% | 23.1% |
病勢制御割合 | 66.7〜73.9% | 69.8% | 53.8% |
■安全性
第II相無作為化比較試験における報告では、Grade 3以上の有害事象として、好中球減少36.3%、疲労15.0%、末梢神経障害11.3%などが報告されている1)。また第III相無作為化比較試験では、Grade 3以上の有害事象として、好中球減少29.3%、貧血5.4%、悪心4.6%などが報告され、末梢神経障害は1.4%であった2)。なお、高齢者を対象にした第II相試験では、Grade 3以上の有害事象として、好中球減少9.3%、疲労7.0%、嘔吐4.6%などが報告され3)、標準治療不応・不耐後の検討では、好中球減少57%、血小板減少24%、貧血14%などが報告された4)。大腸癌に使用する場合と同様に、好中球減少と末梢神経障害に注意が必要と考えられる。
レジメン解説執筆:国立がん研究センター中央病院 消化管内科 山本 駿 先生
References
GI cancer-net
消化器癌治療の広場