末梢神経には、全身の筋肉を動かす運動神経と、痛みや感覚などを感じる感覚神経、血圧や体温調節をする自律神経などがあり、これらの神経の働きが悪くなるために起こる障害を末梢神経障害と呼ぶ。大腸癌化学療法においてkey drugとされるOxaliplatin (L-OHP) の用量規制因子の1つであり、適切な情報提供とマネジメントが必要である。
症状
L-OHPの末梢神経障害には、投与直後から数日以内にみられる急性末梢神経障害と、治療が継続することによって起こる遅延性の慢性末梢神経障害がある1)。
- 急性末梢神経障害:
指先、足先の感覚障害、喉や舌先などの知覚障害が主である。冷たいものを触ることでしびれのような痛みを感じるため、手足を冷やさないことや冷たいものを急に飲まないよう指導を行う必要がある。 - 慢性末梢神経障害:
慢性末梢神経障害は累積投与量に依存し、800mg/m2を超えると発現しやすくなるといわれている。急性の冷感刺激とは異なり、手先が不自由になり、症状が悪化すると日常生活に支障をきたす場合がある。
発現機序
L-OHPは生体内でoxalate基が脱離し、抗腫瘍効果を示すプラチナ化合物に変換する。急性末梢神経障害である冷感刺激は、このoxalate基が、Ca2+と細胞内でキレートを形成することにより、電位依存性ナトリウムチャネルに影響を及ぼし、Na+の流入を阻害するために冷感刺激が起こることが報告されている (図1)2)。
また、遅延性の慢性末梢神経障害は、神経細胞内のプラチナ化合物が神経節細胞や神経繊維を傷害することによって起こると考えられている3)。
エルプラット®の添付文書には、手足がしびれて文字が書きにくい、ボタンがかけにくい、飲み込みにくい、歩きにくい等の感覚性の機能障害が、累積投与量850mg/m2で10%、1,020mg/m2で20%に認められたとの報告が記載されている。なお、Grade 3の末梢神経障害からの回復期間中央値は13週であったことが報告されている (図3)4)。
Grade分類は主にCTCAE v4.0等を用いることが一般的である。CTCAE v4.0における神経障害のGrade分類では、「日常生活動作の制限」ということが基準となり、あいまいな表現のため適切な判断が難しい (表1)。
国内の使用成績調査における末梢神経障害の評価は、Debiopharm社 神経症状-感覚性毒性基準 (DEB-NTC) を用いて評価している (表2)。
FOLFOX4 | FOLFOX6 | mFOLFOX6 | FOLFOX7 |
XELOX | FUFOX | FOLFOX4 + Bevacizumab | XELOX + Bevacizumab |
FOLFOX + Panitumumab | FOLFOX + Cetuximab |
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