レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

SOX+Bevacizumab

*S-1の用量は体表面積(m2)により調整:<1.25m2=80mg;1.25m2≦−<1.50m2=100mg;1.50m2≦=120mg

Yamada Y, et al.: Lancet Oncol. 14(13): 1278-1286, 2013

S-1はフッ化ピリミジン系の経口抗癌剤であり、5-FUのプロドラッグであるテガフールと5-FUの分解酵素であるジヒドロピリミジンデハイドロゲナーゼ(DPD)活性を阻害するギメラシル、5-FUによる消化管毒性を軽減するためのオテラシルを含んだ合剤である。SOX+Bevacizumab(BV)レジメンは、S-1と大腸癌における殺細胞性抗癌剤のkey drugであるOxaliplatin(L-OHP)、血管内皮成長因子に対するヒト化モノクローナル抗体であるBVを併用するレジメンである。SOXは中心静脈ポートが不要であり、FOLFOX6よりも通院頻度が少ないのが特徴である。

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◆SOFT試験

切除不能進行・再発大腸癌患者における1st-lineとして、FOLFOX6+BVに対してSOX+BVが非劣性であることを検証した第III相試験(SOFT試験)が行われた1)。適格症例512例が、FOLFOX6+BV群とSOX+BV群に1:1の割合で無作為化割り付けされた。

■有効性

主要評価項目であるPFS中央値(assessed by investigator)は、FOLFOX6+BV群11.5ヵ月、SOX+BV群11.7ヵ月であり、当初設定された非劣性マージンである1.33を下回り、FOLFOX6+BVに対してSOX+BVが非劣性であることが証明された(p=0.014)。本試験は、試験治療前のbaseline時点から20%以上の増大をもってprogression disease(PD)と判定したため、RECISTの規準によるPFSの定義とは異なっていた。そのため、RECISTの規準に沿ってPFS中央値(assessed by RECIST)が検討されたが、両群で同等であった(p=0.0057)。また、副次評価項目であるOS中央値は、FOLFOX6+BV群30.9ヵ月、SOX+BV群29.6ヵ月であり、OSにおいてFOLFOX6+BVとSOX+BVは同程度であることが示唆された。奏効割合においてもFOLFOX6+BV群63%、SOX+BV群62%であり、両群とも同等であった。

  FOLFOX+BV
(n=256)
SOX+BV
(n=256)
HR
(95% CI)
P値
奏効割合 63% 62%
PFS中央値
(assessed by investigator)
11.5ヵ月 11.7ヵ月 1.04
(0.86-1.27)
0.014
PFS中央値
(assessed by RECIST)
10.2ヵ月 10.2ヵ月 1.02
(0.85-1.23)
0.0057
OS中央値 30.9ヵ月 29.6ヵ月 1.05
(0.80-1.38)

■安全性

5%以上のCTCAE grade(以下grade)3以上の有害事象は、好中球減少、白血球減少、貧血、下痢、食欲不振、末梢性感覚ニューロパチー、高血圧であった。grade 3以上の好中球減少(34% vs. 9%, p<0.0001)と白血球減少(8% vs. 2%, p=0.0029)はFOLFOX6+BV群で有意に頻度が高かったのに対して、grade 3以上の下痢(3% vs. 9%, p=0.004)、食欲不振(1% vs. 5%, p=0.019)はSOX+BV群で有意に高い結果であった。grade 3以上の末梢性感覚ニューロパチー(14% vs. 10%, p=0.17)や手足症候群(0% vs. <1%, p=1.0)、貧血(2% vs. 5%, p=0.16)、高血圧(6% vs. 6%, p=1.0)は両群ともに有意な差を認めなかった。有害事象によって試験治療が継続困難もしくは患者希望により治療継続中止となった患者の割合は、FOLFOX6+BV群51%、SOX+BV群51%で、両群ともに同程度であり、SOX+BVレジメンは有効性・安全性ともに切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとして有用であることが示された。
ただし、S-1に含まれるギメラシルは腎排泄を受けるため、腎機能が低下している患者において、S-1の使用は注意すべきである。SOFT試験では、SOX+BV群においてクレアチニンクリアランス(Ccr)の70mL/minをcut-off値として、70mL/min未満であった患者とそれ以上であった患者でgrade 3/4下痢の出現に有意な差を認めたことが報告されている(21.1% vs. 5.7%, p=0.0012)。一方、FOLFOX6+BV群においてはCcrによってgrade 3/4下痢の出現に有意な差は見られなかった(2.90% vs. 2.80%)。SOX+BVを選択する場合、腎機能に注意して使用すべきである。

レジメン解説執筆:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 伊澤 直樹 先生

Reference

  • 1)Yamada Y, et al.: Lancet Oncol. 14(13): 1278-1286, 2013[PubMed
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