FOLFIRI+Bevacizumab
*CPT-11の結腸・直腸癌における国内承認用量は150mg/m2である。ただし、投与量は、年齢、症状により適宜増減する。 |
Yamazaki K, et al.: Ann Oncol. 27(8): 1539-1546, 2016 |
Irinotecan(CPT-11)は大腸癌における殺細胞性抗癌剤のkey drugであり、フッ化ピリミジン系薬剤と様々な併用療法が考案され、現在で最も有効性が高いCPT-11を含んだフッ化ピリミジン系薬剤とのdoubletレジメンはFOLFIRI療法である。V308(GERCOR)試験1)において切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとして、FOLFOXとFOLFIRIのどちらから使用してもOSに有意な差を認めないことから1st-lineとしてFOLFIRIは広く認知されている。CPT-11の活性体であるSN-38は肝臓内のuridine diphosphate glycosyl transferase 1A1(UGT1A1)によるグルクロン酸抱合を受け、胆汁内に排泄される。UGT1A1には遺伝子の多型(UGT1A1*6,*28)が存在し、多型を持たない患者もしくは1つの多型遺伝子のみヘテロ接合体である患者に比べてホモ接合体もしくは両多型遺伝子共にヘテロ接合体であった場合に、SN-38の排泄が低下し、CPT-11による副作用が増強される。そのため、CPT-11を使用する前にはUGT1A1遺伝子の多型をチェックすることが推奨される。
◆WJOG4407G試験
切除不能進行・再発大腸癌患者における1st-lineとして、FOLFOX6+Bevacizumab(BV)に対してFOLFIRI+BVが非劣性であることを検証した第III相試験が行われた2)。適格症例402例が、FOLFOX6+BV群とFOLFIRI+BV群に1:1の割合で無作為化割り付けされた。
■有効性
主要評価項目であるPFS中央値は、FOLFOX6+BV群10.7ヵ月、FOLFIRI+BV群12.1ヵ月であり、当初設定された非劣性マージンである1.25を下回り、FOLFOX6+BVに対してFOLFIRI+BVが非劣性であることが証明された(p=0.003)。本試験では、非劣性が検証された場合にFOLFOX6+BVに対するFOLFIRI+BVの優越性を解析することがpre-planされていたために優越性の検討も行われたが、FOLFIRI+BVの優越性は証明されなかった(p=0.427)。また、副次評価項目であるOS中央値は、FOLFOX6+BV群30.1ヵ月、FOLFIRI+BV群31.4ヵ月であり、OSにおいてFOLFOX6+BVとFOLFIRI+BVは同程度であることが示唆された。奏効割合においてもFOLFOX6+BV群62%、FOLFIRI+BV群64%であり、両群とも同等であった。
FOLFOX6+BV (n=200) |
FOLFIRI+BV (n=202) |
HR (95% CI) |
P値 | |
奏効割合 | 62% | 64% | − | − |
PFS中央値 | 10.7ヵ月 | 12.1ヵ月 | 0.905 (0.723-1.133) |
0.003 |
OS中央値 | 30.1ヵ月 | 31.4ヵ月 | 0.990 (0.785-1.249) |
− |
■安全性
5%以上のCTCAE grade(以下grade)3以上の有害事象は、好中球減少、白血球減少、発熱性好中球減少症、食欲不振、倦怠感、悪心・嘔吐、下痢、末梢性感覚ニューロパチー、静脈血栓症であった。grade 3以上の好中球減少(45% vs. 35%, p=0.031)と白血球減少(11% vs. 5%, p=0.014)はFOLFIRI+BV群で有意に頻度が高かったのに対して、grade 3以上の末梢性感覚ニューロパチー(22% vs. 0%, p<0.001)はFOLFOX6+BV群で有意に頻度が高かった。有害事象によって試験治療が継続困難となった患者の割合は、FOLFOX6+BV群33%、FOLFIRI+BV群27%で、両群ともに同程度であり、FOLFIRI+BVレジメンは有効性・安全性ともに切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとして有用であることが示された。
本試験では、副次的評価項目としてFACT(functional assessment of cancer therapy)を用いたQOLの調査が実施された。特に神経障害毒性に対して、FACT/GOG-Ntxのneurotoxicity subscale 11項目を用いて評価され、試験治療開始から18ヵ月時点でFOLFOX6+BV群ではFOLFIRI+BV群に比べて、しびれによってQOLを有意に低下させることが示された(p<0.001)。Oxaliplatinの投与継続期間中央値が5.1ヵ月であったことから推測しても、FOLFOX6+BVレジメンでは長期に末梢性感覚ニューロパチーが残存することによってQOLが低下することに注意すべきである。一方、FOLFIRI+BVはCPT-11の投与継続期間中央値が8.5ヵ月であり、下痢や好中球減少などに対する副作用マネジメントをしっかり行えば、QOLを保ちながら長期に使用可能なレジメンであるといえる。
レジメン解説執筆:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 伊澤 直樹 先生
References
GI cancer-net
消化器癌治療の広場